
頭痛は、若い人から高齢の人まで多くの人が日常的に経験する症状です。さまざまな原因があり、心配のない頭痛がある一方で、すぐに治療しなければ命に関わる、危ない頭痛もあります。
心配の少ない頭痛
経験する人が多い、心配の少ない頭痛の代表は、片頭痛や緊張型頭痛です。前者は閃輝暗点(せんきあんてん)(目がチカチカする症状)の後に生じるズキズキとした片側の痛みと吐き気、後者は持続的に締め付けられるような痛みを伴います。それぞれ一時的な脳の血管拡張、首や肩の凝りなどが原因とされ、脳血管を収縮する作用や凝りをほぐす薬が有効なことが多いです。
怖い頭痛
これに対して命に関わる頭痛の代表は、くも膜下出血です。脳の血管に動脈瘤(りゅう)ができ、破裂する病気です。発症した場合、3分の1の人が亡くなり、3分の1の人には後遺症が残り、社会復帰できるのは残る3分の1の人のみといわれています。
くも膜下出血の発症時には、それまで経験したことがないほどの強烈な頭痛が、突然起こります。経験した患者さんは「バットで後頭部を殴られたような痛みを感じた」などと表現しています。
次に代表的なのは脳出血で、脳の血管が破れる病気です。強い頭痛や吐き気に加え、半身のまひや痺(しび)れを来すことがあります。重い後遺症を残すことが少なくありません。
この二つの病気の発症には高血圧、過度の飲酒、喫煙が関連しているといわれます。重い脳の病気にはほかに、脳の血管が詰まる脳梗塞がありますが、頭痛を伴うことは少なく、半身のまひや痺れを来すことが多いです。
薬で起こる頭痛も
心配の少ない頭痛も、適切な治療をせずに、市販の痛み止めなどを飲み続けた場合、さらなる頭痛を引き起こすことがあります。「薬物乱用頭痛」といい、痛み止めで頭痛が起こるようになります。
目安は
(1)頭痛治療薬を3カ月以上常用
(2)1カ月に15日以上の頭痛―です。
治療は難しいのですが、基本的には常用の痛み止めを中止し、適切な頭痛の予防薬を飲むことで改善する可能性があります。
頭痛は日常生活と密接に関係しており、毎日、適切な食事管理や適度な運動をするとともに、過度の飲酒や喫煙をやめることで発症をある程度防ぐことができます。慢性的に頭痛のある人は、これを機に生活を見直してみてください。もし怖い頭痛が起きたら、すぐに周囲の人に声を掛けて医療機関を受診しましょう。
大橋 信彦=神経内科科長、脳卒中センター科長=専門は神経内科領域全般、神経生理学的検査
(2021年1月23日号掲載)