
今回は、心臓の拍動を守る医療機器、ペースメーカーの話です。
心臓は、電気刺激によって拍動しています。心臓の中に刺激を出す場所「洞結節」と刺激の通り道「刺激伝導系」があり、ここに異常が起きると脈拍が遅くなり、体の具合が悪くなります。ペースメーカーは心臓に代わって正常な電気刺激を出し、送ることで、こうした状態を改善します。
ペースメーカーは、3センチ×2センチほどの大きさの本体と、リード(直径1ミリ以下の細^tく柔らかい管)からなります。手術で本体を主に左の鎖骨の下に植え込み、リードを鎖骨下静脈から心臓の中に挿入して固定します。
三つのことに注意
ペースメーカーを使う人は、日常生活で「電気」「磁気」「振動」の三つに気を付ける必要があります。
まず「電気」です。ペースメーカーは心臓からの電気刺激を検知し、心臓が拍動していることを認識しています。このためリードに体の外から電気が流れると、心臓が動いていると誤認識し、出すべき刺激を出さなくなる可能性があります。患者さんは脈拍が遅くなる、速くなるなどの感覚を覚えるはずです。
体の外からの電磁波で電気が流れる危険があるのは、例えば携帯電話やIHクッキングヒーターです。これらは使用が禁止されているわけではありませんが、ペースメーカー本体との距離を保たなければなりません。携帯電話は20センチ、IHクッキングヒーターは40センチ以上離してください。
体に電気が流れる電気風呂、筋肉量や体脂肪率が測定できる体重計は使用禁止です。
次に「磁気」の影響です。ペースメーカーは、磁気を近づけると一定のリズムで脈拍を打つ機能を持っています。ペースメーカーの上や周辺に磁石を近づけるとこの機能が働き、急に脈拍が速まってドキドキと感じます。肩凝りをほぐす磁石付きのシールや、スピーカー機能を搭載したマイクを近づけるとこうしたことが起きるため、使用禁止です。
「振動」も心臓の動きを誤認識する可能性があります。温泉施設などにあるマッサージチェアは使えません。
距離を取れば正常に
もしこうした物を使っていて脈拍がおかしくなったり、急にドキドキする感じを覚えたりする場合は、すぐに使用を中止してください。原因である物と距離を取れば、ペースメーカーはすぐに元の正常な状態に戻りますので、安心してください。
(2021年2月6日号掲載)
写真=宮沢英明=臨床工学科主査(臨床工学技士)