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03 中学・高校 ~本読み競技スキーに憧れ 高3時 本格的に受験勉強

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 私が通った豊島区立西巣鴨中学校は不良生徒が多くいました。高度成長期前で、庶民の生活は貧しく、バラックに住んでいる友達もいました。一方、貧困からはい上がろうと懸命に生きている人もたくさんいました。

 母は小学校卒、父は旧制高等学校卒という学歴です。父は勉強が好きで、本当は大学に入り、先生になりたかった。しかし、千葉県で手広く商売をやっていた祖父が保証人になった知人の会社が破綻し、祖父の会社も人手に渡ってしまい、お金で大変苦労し、父は生活のためにビジネスをやらざるを得ませんでした。自分の子どもにはしっかりとした教育を受けさせたいという気持ちが強かったようです。

 親戚の東大生に父が頼んでわが家に家庭教師として来てもらったのが、当時、東大法学部の学生で、後に衆議院議員になり、防衛大臣を務めた久間章生(きゅうまふみお)先生です。小学5年から中学2年までお世話になりました

 剣道をしていた先生は質実剛健を尊ぶ方。私は柔道を習うために小学校から講道館に通い、中学で柔道部に入りました。キャプテンを務め、練習でくたびれて居眠りをしてしまうこともありましたが、そんな時は厳しく叱られました。

 ある時、「人とうまく付き合う方法」というようなタイトルの本を書棚に置いていたら、「良三君、人と小手先のテクニックで付き合おうなんて、その根性が良くない」と叱られました。「ノウハウ本で学ぶのではなく古典を読みなさい。そして、ちゃんとした人間と付き合いなさい」と、一流の古典にふれる大切さを説かれ、「これを読みなさい」と、フランスの小説家アンドレ・ジッドの本など、お小遣いで何冊も買ってきてくれました。おかげで本を読む習慣がつきました。

 最も多感な年頃に素晴らしい人に出会えたことは本当に幸運でした。先日この思い出を久間先生に話したら「そんなこと言ったかな」と笑っていました。

 当時大きな影響を受けた本といえば、1956年の冬季五輪アルペンスキー男子回転で銀メダルを獲得した猪谷千春さんを英才教育した父、六合雄(くにお)さんが書いた「雪に生きる」という自叙伝です。北海道、東北、志賀高原など転々としながら千春さんにスキーを指導し育てたことが書かれた本を繰り返し読み「いつか競技スキーをやりたい」と思い続けました。真っ白な雪山に憧れ、後にペンションを始めようと山の暮らしに飛び込んだのもこの本の影響が大きいです。

 私は憧れやすく感化されやすい性格です。西部劇のドラマが大好きになると、ザブッと水浴びするだけの男たちが格好良く思えて、「格好いい男はお風呂に入らないんだ」と、物事を単純化して考える真っすぐなタイプです。

 都立豊島高校では、部活動で野球に熱中しました。巨人軍の長嶋茂雄さんに憧れ、守備はサード。東大を目指す仲間にも恵まれ、下校中一緒に歩きながら英単語の問題を出し合うなど意識を高め勉強しました。

 高校3年の時、ホームにスライディングしてキャッチャーとぶつかり右足首を骨折し、1カ月ほど入院しました。これを機に野球をやめ、ラジオ講座などを活用しながら、本格的に受験勉強に取り組みました。秋には体育祭の委員長になり、体育祭を取り仕切りました。

 とりわけ勉強ができたわけではありませんでしたが、いずれ社会でキャリアを積むためにはしっかり勉強しなければと考えて頑張っていました。
(聞き書き・松井明子)
(2021年2月27日号掲載)


写真=中学校入学式の朝、自宅の玄関前で。左は母、後ろに座っているのは祖父