
冬のさなかに快晴となった2月上旬の土曜日、冬場の足慣らしに長野市浅川の薬山(薬師山)=689メートル=から浅川ダム一帯を歩いた。中腹のブランド薬師(八櫛神社)からは、市街地と菅平から志賀高原の山並みを一望。一足早く早春の日差しも楽しんだ。
11時に山仲間3人で市内を出発。飯綱高原に向かう真光寺ループ橋の下に車を止め、鳥居のあるブランド薬師入り口から表参道を登る。
「従是十三佛拝礼道」の碑があり、北側の裏参道にかけ13体の石仏が置かれている。最初は不動明王、次に釈迦如来、さらに文殊菩薩、普賢菩薩、地蔵菩薩、弥勒菩薩、薬師如来、観音菩薩、勢至菩薩、阿弥陀如来、阿しゅく如来、大日如来、虚空蔵菩薩と続く。
中には背面が欠けている像もあるが、いずれも彫りが深く立派な石仏だ。短い距離の間にこれらが点在し、一つひとつ説明板が設置されている。

石段に続く急坂を登って行くと、足元には雪が凍り付いている。滑らないように注意しながら、一登りするとブランド薬師に。崖から宙にせり出すように建てられた懸崖造りの社殿が目を引く。
名前の由来は、建物自体がブランと揺れることから「ブラン堂」「浮蘭堂」、下に落ちないことから「不落堂」など諸説あるようだ。
社殿の内部に入ると、北側の岩窟の中に祭神の少彦名神(すくなひこなのかみ)の石像が安置されている。南側を見渡すと、長野市街地と背後の山々の眺望が素晴らしい。
社殿から少し西側に大きなあずまやがある。ここのベンチで市街地を眺めながら昼食。たっぷり休んだ後、コンクリート舗装の道を登り詰めると、阿弥陀如来の立像がある小高い地点に。山頂標識はないが、この辺りが薬山の頂上のようだ。
ここからは下りに。10分ほどで鳥居のある裏参道の入り口に着く。すぐ脇に3体の馬頭観音の石像がある。
薬山を後にして、舗装道路を東側に下る。ぽかぽか陽気で暑いほどだ。間もなく、浅川ダムが見えてきた。冬の渇水期でもあり、穴開きダムとあって湛水はなく、底部も川が流れているだけだ。

上流部の一ノ瀬橋を渡ると、「浅川ダム フジバカマ苑」の看板が。ダムの後背地で食草のフジバカマを育て、羽が美しく渡りをするチョウのアサギマダラを呼ぶ試みのようだ。
展望台広場で上からダムを見た後、ダムサイトの脇を下ってダムの直下へ。さらに旧道を歩いてループ橋の下に出た。
ここまでの行程は、浅川地区が設定した「浅川ダム上下展望&ブランド薬師参拝コース」(総距離約5キロ)となっている。市街地から近く、手軽なハイキングコースだ。
(横前公行)
(2021年3月6日号掲載)
社殿から望む市街地と菅平から志賀高原の山並み
宙にせり出すブランド薬師

山頂部と思われる阿弥陀如来の石仏