39 参照点依存性 ~参照点と比べ 価値を測る

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 突然、「お宅の来年の世帯年収は500万円になります」と言われたと想像してください。あなたは喜びますか、それとも悲しみますか。それは人によって違うはずです。なぜなら誰もが、前年の年収と比較して考えるからです。仮に前年の年収が300万円であれば、200万円も上がったとうれしくなるでしょう。前年が700万円であれば残念に思うことでしょう。

 ここでの前年の年収のような判断基準を、行動経済学では「参照点」と呼びます。人は「年収500万円」と示されても、数字だけでその価値を判断することはできません。基準となる参照点との相対的な比較によってその価値を測るのです。参照点が違うと価値も変わってしまうのです。この傾向を「参照点依存性」と呼びます。

 参照点はどんな時も固定されているわけではなく、時々の状況によって簡単に変わってしまいます。例えば先ほどの質問で仮にあなたは、前年に300万円だった年収が500万円に増えて喜んでいたとしましょう。その直後に、あなたの近所に住む幼なじみの平均年収が800万円であることを知ったとします。あなたはどんな気持ちになるでしょうか。

 最初の参照点は、自分の前年の年収(300万円)でした。ところが身近な幼なじみの年収を聞いた後では、800万円が新たな参照点となったため「少な過ぎる」と不満が生まれてしまうのです。

 しかし、このように参照点依存性に幸せか不幸かの判断を左右されるのは不健康です。参照点依存性により心理が変わる傾向を自覚していれば、感情を安定させることもできるはずです。

 世論調査などを行う米国ギャラップ社による世界164カ国、170万人への調査によると、日本や東アジアで「幸せにつながる年収」は6万ドル(約660万円)だそうです(各国通貨の購買力の差は調整済み)。

 これは調査対象者が「楽しみや笑顔につながる」と考える金額です。この調査結果のような客観的な数値を基準にするのであれば、決められた参照点に左右されずに済むかもしれません。大事なのは自身の判断です。お金の比較で上を見て不満を感じるのはやめた方が良いでしょう。
(マーケティングコンサルタント)


(2021年4月24日号掲載)
 
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