追 憶 ~降旗・木村コンビで 高倉健の存在を意識~

  「駅 STATION」(1981年)、「居酒屋兆治」(83年)、「鉄道員(ぽっぽや)」(99年)...。高倉健主演の名作の数々を送り出してきた松本市出身の降旗康男監督とカメラマンの木村大作が、9年ぶりにコンビを組んだ16作目が、北陸を舞台にしたヒューマンサスペンス「追憶」だ。

 親に捨てられた篤、啓太、悟の3人の少年たちは、涼子(安藤サクラ)が経営する喫茶店に身を寄せ合い、家族のように暮らしていた。ある事件がきっかけで、二度と会わないという誓いをたて、離れ離れになって25年が過ぎた。

 富山県警捜査一課の刑事となった篤(岡田准一)は、殺人事件の被害者となった悟(柄本佑)と再会。しかも、容疑者として名前が挙がったのは啓太(小栗旬)だった。かつて親友だった幼なじみの3人が、刑事、容疑者、被害者の立場でつながった時から、封印したはずの忌まわしい過去が動き出す。

 高倉健の遺作「あなたへ」(2012年)の脚本家によるオリジナルストーリーで、降旗監督が高倉健の面影を重ねたのが岡田准一の存在だったという。

 「永遠の0」(13年)で日本アカデミー賞主演男優賞を受賞し、アクションだけではなく、演技派俳優としても高い評価がある岡田も期待に応えて、心に傷を負い、愛することに葛藤を抱える孤独な主人公を寡黙に演じ切った。

 そんな岡田の表情を、木村大作も、せりふではなくたたずまいだけで見る者に多くを語り掛けた高倉健の存在を意識して撮影したという。

 現在と過去が交差する物語の行間を紡ぐ詩情豊かな映像の素晴らしさ。雪が舞う漁港、白い波に飛ぶカモメ、夕日を映した波が銀鱗(ぎんりん)のように光る。自分も監督として作品を手掛ける木村大作の徹底的なこだわりが生み出す映像は、その土地に生きる人々の心の機微を繊細に映し出す。

 木村は岡田にカメラを持たせて撮影を伝授したエピソードがあり、エンドロールでは撮影スタッフの一人として岡田准一の名前が挙がる。「映画人、活動屋を育てたい」。巨匠たちのそんな熱い思いまで伝わってくる作品となった。
=1時間39分
(2017年4月29日号掲載)

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