ハクソー・リッジ ~沖縄戦実話の映画化 命と向き合う衛生兵~

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 第2次世界大戦で米軍を苦戦させた難攻不落の要塞(ようさい)「ハクソー・リッジ」。米軍が、のこぎり(ハクソー)の歯のような崖(リッジ)と呼んだ沖縄の激戦地、前田高地で起きた実話の映画化だ。

 戦争が激化し多くの若者が出征していった。「汝(なんじ)、殺すことなかれ」という神との誓いを立てたデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は、衛生兵として志願する。

 だが、良心的兵役拒否者として銃を持てないドスは、狙撃訓練を拒否したことで、上官からも仲間からも冷たく扱われ、軍法会議にまでかけられてしまう。「戦争は人を殺すこと」と命令する軍に、断固として「人を殺せない」という信念を貫こうとするドス。彼の命と向き合う姿は、次第に周りの人々を変えていく。

 「アメイジング・スパイダーマン」(2012年)「沈黙・サイレンス」(16年)と、ジャンルの違う作品で役者として力量を見せつけるガーフィールドは、穏やかなほほ笑みで、真のヒーローを演じ切った。

 俳優でもある監督のメル・ギブソンはオスカー受賞作「ブレイブハート」(1995年)で見せた迫力満点の闘いを、見事に再現。やむことのない砲撃に肉体は砕け、血が飛び散る。残酷なほど壮絶なシーンは、戦争の現実を容赦なく突き付ける。

 死を名誉と教え込まれた日本軍兵士が、命令でいとも簡単に命を捨てていく姿は、同じ日本人として目を背けたくなるほどつらく、胸が苦しくなる。

 そんな中でたった一人、命を救う戦いに挑んだドスは、良心的兵役拒否者としてアメリカ史上初めて名誉勲章を授与された。エンドロールで救われた人々の声で真実が語られる。

 ドスのような人物がいた驚き。メル・ギブソン監督は鼓舞するのではなく、冷静な視点でこれまで描かれることのなかった戦争を見つめる。凄惨(せいさん)であればあるほど、反戦への思いを強くさせる。

 日本人が知るべき衝撃の物語は、アカデミー賞で作品賞、主演男優賞など6部門ノミネート、編集・録音の2部門で受賞した。
=2時間19分
(2017年6月17日号掲載)

=写真=(C) Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016

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