幼な子われらに生まれ ~重松清作品を映画化 家族の在り方を描く

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(C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会
 「幼な子われらに生まれ」は、直木賞作家重松清が21年前に書いた小説が原作である。荒井晴彦の脚本、三島有紀子監督によって家族の物語として映画化された。

 商社マンの田中信(浅野忠信)とバツイチ2人の子持ちの奈苗(田中麗奈)は再婚同士。キャリア志向の信の前妻、友佳(寺島しのぶ)との間に生まれた小学6年の娘と定期的に会う時間を大切にしている。

 仕事よりも家庭を優先する信は出向を命じられ、エリートサラリーマンから一転、子会社の倉庫係に左遷され、
プライドを傷つけられながら日々働く毎日だ。

 しかも、奈苗の妊娠が発覚し、多感な年頃になった妻の連れ子から「本当の父親に会いたい」と責められる。仕方なく父親の沢田(宮藤官九郎)に会いにいくが、DVで家族を捨てた沢田は、くずのような男だ。

 妻の妊娠で異母きょうだいが生まれることへの戸惑いと、徐々に重荷が増える生活に息苦しさを覚える信。平穏な暮らしに見えながら、新たな家族が生まれることで、つぎはぎだらけの家族の間にさざ波が立ち始める。

 信が出会うのは元妻の夫と、今の妻の元夫。別れても慕ってくれる実の娘と、血のつながらない懐かない娘の対極的な反応に迷いながらも、良き父親であろうとする浅野忠信の繊細な演技が印象的だ。家庭的だが、男に依存するタイプの妻を演じた田中麗奈のべったり感は、女性から見ても身につまされる。

 頭で分かっていても、感情がぶつかりあい傷つけあってしまう、人間という存在。そんな不器用な大人たちの姿に魅力を感じたという三島監督は、脚本に書かれたせりふだけでなく、役者たちのエチュード、即興の演技から感情をくみ取り、多くのシーンが生まれたと語る。そんな役者たちの演技も見どころだ。

 父性とは、母性とは何なのか。血はつながっていなくても親子になれるのか。多様化する現代の家族の絆のあり方をリアルに描いた物語は、モントリオール世界映画祭コンペティション部門で審査員特別グランプリを受賞した。

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