ザ・サークル ~「ネット社会」の脅威 未来へ警鐘を鳴らす

 「炎上とは、インターネット
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上に非難や中傷が集中すること」。10年ぶりに改訂される広辞苑に、IT関連の用語がいくつも採用されたり、炎上のように新しい意味が付記されたりする。今や誰もが手軽にラインでつながるネット社会。「ザ・サークル」はネット社会の脅威をあぶりだす問題作だ。

 地元の田舎町で派遣社員として働くメイ(エマ・ワトソン)は、大学時代の親友の紹介で世界最大のSNS企業〈サークル〉に採用された。一流企業で福祉も完璧。社員たちも有能で、刺激的な職場に圧倒されながら、仕事に奮闘し、次第に頭角を現す。だが、炎上を体験したことで、プライバシーがなくなっていくことに違和感をぬぐえない。

 ある事件をきっかけに経営者ベイリー(トム・ハンクス)の目に留まったメイは、新たに開発された超小型カメラによるサービス「シー・チェンジ」のモデルケースに抜てきされる。生活の全てをカメラの前にさらけだしたメイは、1千万人を超すフォロワーを獲得し、人気者になるが、思いがけない事件に巻き込まれていく。

 スクリーン全体が、まるでSNSの画面のように映し出される。フォロワーからツィートが書き込まれ、「いいね」と賛同される心地よさ。だが、ひとたび批判が拡散すると、残酷なまでに悪意をまき散らすネットの怖さを見事に伝えるシーンだ。

 名優トム・ハンクスがふんするのは、スティーブ・ジョブズばりのカリスマCEO。野望を隠しながら、巧みな弁舌で人々を魅了し、洗脳していく。

 原作はピュリツァー賞にもノミネートされた作家ディブ・エガーズのベストセラー小説「ザ・サークル」。人々を結びつけるシェアが、ひとたび監視という言葉に置き換わった時に起きる閉塞感。すぐ先に待ち受けている未来に、どう向き合えばいいのか。巨大な監視システムに匹敵するネット社会がもたらす脅威に警鐘を鳴らす社会派エンターテインメントだ。

 メイの父親役を演じたビル・パクストンは今年2月に急逝し、この作品が遺作となった。
    =1時間50分
(2017年11月11日掲載)

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