北の桜守 ~吉永小百合120本目作 親子の愛と絆を描く

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(C)2018「北の桜守」製作委員会

 南の沖縄、北の北方領土と戦争の深い傷跡は、いまだに悲しみをもたらしている。これまでも平和への願いを数々の作品に込めてきた吉永小百合の120本目となる出演作が「北の桜守」である。「北の零年」(2005年)、「北のカナリアたち」(2012年)に続いて、広大な北海道を舞台に、激動の時代を生き抜いた親子の愛と絆の物語だ。

 1945年8月9日、ソ連が対日参戦。日本領だった南樺太(ロシア・サハリン南部)に侵攻を始めた。多くの日本人が土地を追われ、命を失った。製材所を営む江蓮家にも危険が迫り、てつ(吉永小百合)は夫徳次郎(阿部寛)と再会の約束を胸に、2人の息子を連れて命からがら網走に引き揚げてきた。

 それから26年、渡米していた次男の修二郎(堺雅人)は札幌で外食チェーンの日本上陸一号店を開くため帰国。多忙を極める中でもたらされたのは、網走で元気に暮らしているとばかり思っていた母親の老いと病気だった。

 15年ぶりに再会した母親と2人で思い出をたどる旅の中で、封印されていた悲しい記憶が明かされていく。

 タイトルの「桜守」は桜を保護し育てる人のことである。子どもが生まれた時にまいた種から育ててきたてつにとって、幸せの象徴である桜は特別な意味を持つ木なのだ。

 まるで自分が桜の化身かのようにはかなく潔く、芯の強さを秘めた母を演じるのに、これほどふさわしい女優はいないのではないか―と、吉永小百合という映画女優の存在感に圧倒される。年齢を重ねても変わらぬりんとした美しさ。極寒の地で、体当たりで臨んだ撮影だけでなく、新たな試みにも挑戦している。実写だけでなく、劇中劇として舞台演出を取り入れ、引き揚げの道中で起きた悲劇を、演劇を見ているかのように幻想的に訴える。吉永にとって舞台演劇は初めてなのだという。

 史実を基にしたフィクションとはいえ、あまりにも多くの犠牲を払った残酷な歴史に、戦争の悲惨さを忘れてはならないと思う。

 監督は「おくりびと」(2008年)で日本映画初となるアカデミー賞外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎監督だ。

=2時間6分

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