ゲティ家の身代金 ~実際の誘拐事件描く 母親の強い愛と闘い

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 世界一の大富豪とも称されたアメリカの石油王ジャン・ポール・ゲティ。「ゲティ家の身代金」は、世界中から注目された誘拐事件の顛末をスリリングに描いた実話の映画化である。

 1973年、ローマで17歳の孫ジョン・ポール・ゲティ3世が誘拐された。犯人は母親のアビゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)に1700万ドル、当時の換算でおよそ50億円もの身代金を要求してきた。

 子どもの親権だけを望み、既に離婚していたアビゲイルは、疎遠になっていたポールの祖父ジャン(クリストファー・プラマー)を頼るが、支払いを拒否されてしまう。ジャンは部下で元CIA(米中央情報局)のフレッチャー(マーク・ウォールバーグ)を交渉役として、アビゲイルの下に向かわせる。

 資産が数えられるうちは、本当の金持ちではないとうそぶくジャン。「孫が14人もいるから1人に払うと、ほかの孫も誘拐される」。正論のように聞こえる言い訳も、その本心は醜い守銭奴の姿だ。美術品のコレクターとしても知られるジャンは、美術品には大金を払っても、人間の命には払わない。

 家族を犠牲に富を築いてきた男のエゴに立ち向かうのは、「なんとしても息子を救い出す」という母親の強い愛だ。残忍な誘拐犯だけでなく、冷徹な義父との駆け引きに挑むアビゲイルの闘いが緊迫感を盛り上げる。

 公開直前にジャン役だったケビン・スペイシーがセクハラ問題で降板。リドリー・スコット監督が代役にクリストファー・プラマーを起用し、わずか9日間で撮り直したといういわくつきの作品だが、鬼気迫るプラマーの怪演でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、賞レースで評価された。

 監督が大好きだという「甘い生活」(1960年)に使われた噴水広場で撮影したオープニングシーンから、一気に物語の世界観へと引き込まれていく。モノクロからカラーへ、さらに色彩心理にこだわった衣装や映像が印象的だ。

 大富豪と誘拐犯。対極に見えながら、金にとらわれた浅ましさとむなしさ。息つく暇もない二転三転の極上サスペンスだ。
=2時間13分
(2018年5月26日掲載)

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