終わった人 ~定年後サラリーマン 妻に夫の存在が重く

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(C)「終わった人」製作委員会

 「定年って生前葬だな」。部下たちから贈られた花束を抱え、勤務先を後にするサラリーマン。人生の転機を迎えたシニア世代の悲喜こもごもを描いた「終わった人」。内館牧子さん原作のベストセラー小説の映画化だ。

 東大法学部から大手銀行に就職。超エリートなはずが出世コースから外れ、出向先の子会社で定年を迎えた田代壮介(舘ひろし)は、仕事一筋で趣味もなく、ゆっくり過ぎる時間に何をしたらよいのか分からない。老人的なことから距離を置こうするが、公園も図書館もスポーツジムも高齢者であふれている。新たな生きがいを求める壮介に、ある出会いが待っていた。

 もう一人の主人公は、夫とともに生きてきた妻の千草(黒木瞳)。家庭を支えながら先を見据えて、美容師としても着実にキャリアを築いているしっかり者だ。定年をきっかけに、夫婦の間に微妙な変化が起き始める。

 昼間いなかった夫が毎日朝から一緒にいる妻のストレスが、男性諸氏に分かってもらえるだろうか。気ままだった外出も気兼ねしつつ、1日3食の食事作りは結構負担だ。満開の桜を見ても、「残る桜も散る桜」などと言う悲壮感あふれる愚痴を聞かされるはめになり、妻は次第に夫の存在が重くなる。そんな夫婦の身につまされる日常とエピソードがリアルに描かれる。

 誰にも訪れる老後をいかに充実させ、自分を切り替えていくか。自分の居場所探しにジタバタする男と、一歩先を行く女の違いが巧みにちりばめられて、うなずきながら思わず苦笑いしてしまう。

 68歳ながらダンディーな舘ひろしが、これまでにない役柄に挑戦。「リング」(1998年)や「仄暗い水の底から」(2002年)の中田秀夫監督が、原作にほれこみ手掛けた。ジャパニーズホラーの名手として知られる中田監督の初めての人間喜劇という意外性にも注目だ。
(2018年6月9日掲載)

 いつかは向き合わなければならない終わりの時。仕事はリタイアしても、人生をリタイアしないためのヒントが満載のちょっぴり辛口なコメディーだ。
=2時間5分

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