検察側の罪人 ~正義とは何かを問う 人間ドラマの深みも

 人が人を裁くことで生まれる葛藤や冤罪。「検察側の罪人」は、正義とは何かを鋭く問い掛ける雫井脩介の問題作を、原田真人監督が監督、脚本を手掛けた社会派ミステリーだ。

 エリート検察官の最上(木村拓哉)の下に、研修時代に指導をした若手検事の沖野(二宮和也)が配属されてきた。老夫婦殺人事件を担当した最上は、容疑者リストの中に、時効になっていた未解決事件の重要人物だった松倉の名前を見つけ、悲しい記憶をよみがえらせる。

 松倉は女子中学生殺人事件の第一容疑者でありながら、証拠不十分で法の手を逃れていた男だった。最上は闇社会のブローカー諏訪部(松重豊)を利用して、執拗に松倉を追い詰めていくが、捜査の流れに不自然さを感じた沖野は、次第に疑念を募らせる。

 犯人逮捕のために強引なストーリーを作る検察に対抗して、弁護側もアナザーストーリーで対抗する恐ろしさ。冤罪が生まれる過程を垣間見ることができる。

 司法が罰することができなかった犯人に自ら刑を下そうとする最上。趣味が、裁判官が判決を下す木づちの収集というのも、法の執行に誇りと執念をかける思いが伝わってくるようだ。

 有能な最上に心酔しながらも対立し、互いの信念を賭けて戦う2人の検事を演じた木村拓哉と二宮和也が静かに火花を散らす演技も見どころだ。脇役の顔ぶれも素晴らしいが、特に、不遜な態度で死者を冒涜する松倉役の酒向芳は、あまりの不快感で怒りがこみ上げ、演技ということを忘れてしまうほどの怪演である。

 都会の風景が合わせ鏡のように、境界線上で天地に映し出されるオープニング。真実とうそ、善と悪、被疑者はシロかクロか。作品のテーマを切り取ったかのような映像に被害者が愛したダイナ・ワシントンの曲が重なる。

 最上の祖父は、多くの兵が命を落とした旧日本軍のインパール作戦の生き残りだった。祖父の体験をつづった「白骨街道」というエピソードも、印象的に絡み合う。原作に人間ドラマとして深みを与える原田監督ならではの世界観に引き込まれる。心に突き刺さる重厚なサスペンスだ。
=2時間3分
(2018年8月18日掲載)

長野グランドシネマズ((電)233・3415)で8月24日(金)から公開

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