英国総督 最後の家 ~独立前後のインド 歴史の裏側を知る

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(C)PATHE PRODUCTIONS LIMITED, RELIANCE BIG ENTERTAINMENT(US) INC., BRITISH BROADCASTING CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE AND BEND IT FILMS LIMITED, 2016

 第2次大戦で国力が疲弊したイギリスは1947年、植民地だったインドの独立を認めた。「英国総督 最後の家」は、独立前後の激動のインドを舞台に、人々の思いを描いた人間ドラマだ。

 主権譲渡の任務を託され、最後のイギリス総督に就いたマウントバッテン卿(ヒュー・ボネビル)は、妻エドウィナ(ジリアン・アンダーソン)と共に、首都デリーにやってきた。

 インド人指導者たちとインドの未来にとって最善の道を模索しようとするが、それぞれの主張は対立を深め、交渉は困難を極めていた。統一か分離か、ヒンズー教徒とシク教徒が統一インドを、ムスリム連盟はパキスタン建国を願い、人々の対立は内乱を巻き起こす。

 歴史的な決断はいかになされたのか。人道的なガンジー、インドの初代首相となったネール、パキスタンの建国者ジンナーという3人の重要人物がまるでよみがえったかのように、時代を再現する。

 しかし、国を選ぶことで移動する住民への略奪や暴行が頻発した。百万人ともされる犠牲者が出た無差別大虐殺のニュース映像は、あまりにも悲惨だ。

 政治ドラマとともに描かれる総督秘書のインド人青年ジートと邸宅で働く美しい娘アーリアとの恋も、歴史の波にのみ込まれていく。植民地という呪縛から逃れても、信仰や身分制度が若者たちの恋の行く手を阻む悲しさがインドの現実だ。

 総督官邸では、白いユニホームを着た500人もの使用人が出迎える。200年も支配した総督たちの写真が壁に並び、インド女帝となったビクトリア女王の胸像がいかめしい。壮麗な邸宅で、イギリスが栄華を享受していたことが分かるシーンだ。現在、インド大統領官邸となっている本物の総督の家で特別に撮影が許可され、マウントバッテン家とスタッフが一同に並んだ映像は壮観だ。

 脚本も手掛けたグリンダ・チャーダ監督は、難民キャンプを体験した祖父母たちのファミリーヒストリーとしても、インド人の苦しみや悲しみ、喜びの歴史と向き合った。混迷の歴史の裏側を知る貴重な作品だ。
=1時間46分
(2018年9月29日掲載)


(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野ロキシー((電)232・3016)で10月6日(土)から公開

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