ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス ~老ミュージシャンたち 最後の雄姿を収める

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(C)2017 Broad Green Pictures LLC

 1997年、キューバの老ミュージシャンたちの音楽シーンに世界が熱狂した。アメリカのギタリスト、ライ・クーダーがプロデュースしたアルバムはグラミー賞を受賞し、ドキュメンタリー映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(日本公開2000年)は、アカデミー賞にもノミネートされた。

 「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス」は、彼らのその後の物語だ。

 あれから18年、グループのステージ活動に終止符を打つと決めたメンバーが「アディオス・さようなら」世界ツアーを行った。白人の母と黒人の父を持つ伝説の歌姫オマーラ、たばこ工場で働いていたコンバイ、遊郭のギタリスト・エリアデス、靴磨きをしていたイブライムら、カメラは苦労を重ねながら音楽を求め続けたメンバーたちの生い立ちや、音楽のルーツを捉える。

 白人と黒人の分離政策差別があり、黒人限定の社交場だった「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」が、そのままバンド名になった。

 キューバ人にとって音楽は食べ物と同じ、なくてはならないものだ。アフリカからの奴隷時代に始まり、スペインによる支配などの影響を受けて生まれた「ソン」には、ラテン音楽の魂が詰まっている。

 つえがないと歩けない年齢となって有名になった彼らだが、演奏が始まると、たちまちかっこいいミュージシャンに変身する。円熟味のある歌声と演奏。「キューバ音楽のレジェンド」である彼らの存在は、キューバの歴史そのものだ。

 大ヒットした「チャン・チャン」は何度聞いても素晴らしい。字幕でしか分からないのが残念だが、歌詞に込められた意味の重さが深い感動を呼び覚ます。

 前作でメガホンをとった名匠ビム・ベンダースが製作総指揮に回り、新たにドキュメンタリー映画に手腕を発揮するルーシー・ウォーカー監督が彼らと旅をし、最後の雄姿をカメラに収めた。

 誰もが人生でいつか輝くときがある。そして誰にでも必ず訪れる死。最後の瞬間まで音楽の女神に愛された彼らの姿を見ることは、なんと至福の時なのだろう。
=1時間50分
(2018年10月27日掲載)

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野千石劇場((電)226・7665)で公開中

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