空母いぶき ~武装攻撃を受けたら 近未来描く漫画原作

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(C)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ

 もし、日本が武装攻撃を受けたら国はどう動くのか。「空母いぶき」は、漫画家かわぐちかいじさん原作の人気コミックの実写映画化だ。

 クリスマスを控えてにぎわう近未来の日本。波留間群島初島に国籍不明の武装集団が上陸して占拠した―という一報が届く。海上自衛隊の出動命令を受け、航海訓練中の第5護衛隊群が現場海域に向かった。戦後初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」は、計画段階から国論を二分してきた戦艦だった。

 だが、敵潜水艦から突然ミサイル攻撃を受けただけでなく、空母艦隊まで姿を現し、想定を超えた戦闘状態に追い込まれてしまう。

 不気味なほどの笑みを浮かべ、武力行使を主張する艦長の秋津(西島秀俊)。専守防衛を唱えて対立する副長の新波(佐々木蔵之介)。自分の信念を貫こうとする2人の自衛官の息詰まるような攻防が描き出される。任務を遂行するために命を懸ける人たちの緊迫感あふれる姿も大きな見どころだ。

 いきり立つ政治家たちを前に苦渋の決断を迫られる首相の垂水(佐藤浩市)。偶然、取材で乗艦していたネットニュース社の記者。幾つもの目線で運命の一日が描かれていく。

 領有権の問題に絡んで、他国による日本領海への侵入が繰り返されている現実があるだけに、架空の物語とは言い切れない怖さがある。2001年12月には、鹿児島県の奄美大島沖で海上保安庁の巡視船が、不審船との間で銃撃戦になったこともある。

 政府は昨年12月に閣議決定した「防衛計画の大綱」で、海上自衛隊の護衛艦「いずも」型2隻の改修を明記。最新の戦闘機を載せることができるようになる事実上の空母であり、専守防衛の範囲を超える―という懸念が生じている。

 上皇さまは昨年12月、天皇陛下在位中の誕生日に当たっての記者会見で「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵(あんど)している」と述べられた。今の平和は当たり前のことではなく、多くの犠牲の上に成り立っていることに気付かされた。

 戦争を繰り返さないために、私たちはどうすればよいのか。さまざまな問題を提起した見応え十分の人間ドラマとなった。

=2時間14分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野グランドシネマズ((電)233・3415)で5月24日(金)から公開
(2019年5月18日掲載)

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