風をつかまえた少年 ~貧困の村を救った 14歳の知恵と勇気

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 アフリカで最も貧しい国の一つと言われるマラウイ共和国。「風をつかまえた少年」は、14歳のウィリアムが知恵と勇気で村を救った奇跡の実話の映画化だ。

 2001年、理科が得意な少年ウィリアム(マックスウェル・シンバ)は、真新しい制服を着て、誇らしげな笑顔を見せていた。父トライウェル(キウェテル・イジョフォー)と母に見送られ中学に通い始めたのもつかの間、大干ばつで家の収入が途絶え、学費を払えないウィリアムは退学を余儀なくされる。諦められないウィリアムは図書館に忍び込んで独学で学び、一冊の本との出合いが運命を変えてゆく。

 捨てられた廃材の中から役に立ちそうなものを拾い組み立てる。それはもうゴミではなく形を変えた資源となる。その発想を生み出す知識の素晴らしさ。日本なら義務教育で誰でも教育を受けられるのに、学ぶ機会を奪う貧困の悲しさと怖さがある。

 もっと怖いのは目先の欲で金と引き換えに森を伐採し、むき出しとなった乾いた大地が人間に復讐するかのように、干ばつと洪水を繰り返す。さらに飢餓の脅威が人々の心をすさませ、略奪まで起きてしまう。今もアマゾンでは人間による森林破壊が原因で火災が続き、多くの熱帯雨林が失われ深刻な問題となっている。

 アカデミー賞作品賞を受賞した「それでも夜は明ける」(2013年)で、自由黒人から奴隷にされた音楽家を演じたキウェテル・イジョフォーが、父親役だけでなく監督・脚本も手掛けた。アフリカからの視点でリアルに描きたいとマラウイでの撮影を敢行している。

 無学で肉体労働を優先する父と息子の確執と絆。見守る母親のアフリカの大地のようなたくましさ。そんな女性たちのファッションも目を奪う。

 原作のノンフィクションは世界的ベストセラーとなり、独力で電気を起こす風車を作り、自家発電に成功したウィリアムは2013年タイム誌の「世界を変える30人」にも選ばれた。風だけでなく未来もつかんだ少年の希望は、私たち人類の希望でもある。

 文部科学省選定(少年・青年・成人・家庭向き)。
    =1時間53分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野ロキシー((電)232・3016)で公開中
(2019年9月14日号掲載)

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