トールキン 旅のはじまり~映画化された傑作 作者の苦悩と冒険

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(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

 ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンの傑作小説「指輪物語」「ホビットの冒険」は映画化されると、壮大なファンタジーの世界が多くの人々を魅了した。これらの作品がいかにして生まれたのか。「トールキン 旅のはじまり」は、偉大な言語学者でもあったトールキンの知られざる素顔と青年時代を描いた物語だ。

 トールキン(ニコラス・ホルト)は1892年南アフリカに生まれた。幼くして父を亡くし、イギリス・バーミンガムの母親の実家で暮らすが、12歳の時に母親も他界し無一文の孤児になってしまう。後見人の神父の計らいで勉学を続けるトールキンに、かけがえのない出会いが待っていた。

 トールキンの感性を育んだのは、まずは母親の存在だ。「どこであれ幸せなら、そこがわが家」。愛情深い母の教えと、貧しくとも想像力豊かな母親と過ごした時間が、トールキンの創作力と夢を育てた。そしてバーミンガムの美しい自然が、ホビットの物語の舞台となった。

 名門キング・エドワード校からオックスフォード大学へと進み、上流家庭の裕福な学生たちに交じって学ぶトールキンは、志を共にする3人と出会う。4人は「芸術の力で世界を変える」をスローガンに同盟を結び、生涯にわたる友情と絆を紡いでいく。

 映画「ロード・オブ・ザ・リング」(2001年)で、「ホビット」の4人組が「魔法使い」「ドワーフ」「エルフ」「人間」など違う種族と仲間となり、旅を続けるうちに理解と信頼を深めてゆくストーリーは、孤独だったトールキン自身の人生をたどるようだ。

 物語に登場する「中つ国」で、本物の言語のように会話する緻密さに驚かされたが、言語学と文学の研究に打ち込んだトールキンは、自分で言葉を発明する天才だった。

 多くの死と、自身も命を落としかけたことが後まで彼を苦しめたという第1次世界大戦への出兵。そして永遠の恋人とのロマンス。若き日のトールキンの苦悩と冒険が散りばめられた伝記は、物語の原点と出合う旅となった。
   =1時間52分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野ロキシー((電)232・3016)で28日(土)から公開
(2019年9月21日号掲載)

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