ゴールデン・リバー ~開拓時代を舞台に 濃密な人間ドラマ

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 時はゴールドラッシュに沸く米国西部。金脈を求め多くの人々がカリフォルニアへと群れをなしていた。「ゴールデン・リバー」の原題は「ザ・シスターズ・ブラザーズ」。権威あるブッカー賞の最終候補作にもなった、パトリック・デウィットのミステリー小説の映画化だ。

 悪名高い殺し屋シスターズ兄弟のイーライ(ジョン・C・ライリー)とチャーリー(ホアキン・フェニックス)は、雇い主の提督からある殺人依頼を受ける。ターゲットは化学者のウォーム(リズ・アーメッド)。先に出発していた仕事仲間の連絡係モリス(ジェイク・ギレンホール)が居場所を突き止め、簡単に済む仕事のはずだった。

 開拓時代の西部を舞台にしながら、西部劇のジャンルを超えた濃密な人間ドラマに圧倒される。人の命をいとも簡単に奪う残忍な弟チャーリーに振り回されながらも、殺し屋稼業から足を洗い普通の人生に憧れる素朴な兄イーライの兄弟愛。ウォームを見張るうちにいつしかその人間性に魅せられてゆく連絡係のモリス。荒くれと知性派という相対する2組の男たちが顔をそろえたとき、思いがけない結末が待っていた。

 演じる4人は高い演技力で評価される個性派の面々。ひと癖もふた癖もある人物の内面を完璧なまでに捉えた見事な演技に、ぐんぐん引き込まれてしまう。

 なぜ化学者が狙われるのか。殺し屋が次第に迫ってくる追跡劇の緊張感と、道中で繰り広げられる激しい銃撃戦。ウエスタンにミステリーというスパイスを融合させた異色のサスペンスにほれ込んだジョン・C・ライリーが制作も務めている。

 ゴールドラッシュが突き動かす人間の欲望と心の変化を鮮やかに描写したのは、数々の映画賞に輝くフランスの名匠ジャック・オーディアール監督だ。この作品もベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞、フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞では9部門にノミネートされ、監督、撮影など4部門で受賞した話題作だ。

=2時間2分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野千石劇場((電)226・7665)で公開中
(2019年9月28日号掲載)

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