閉鎖病棟 ~次第に明かされる 3人の壮絶な過去

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(C)2019「閉鎖病棟」製作委員会 (C)H.Hahakigi/Sncs

 「閉鎖病棟」とは常時施錠され自由に出入りできない精神科の病棟のこと。「閉鎖病棟  ―それぞれの朝」は、自身が現役の精神科医でもある作家・帚木(ははきぎ)蓬生(ほうせい)の山本周五郎賞を受賞したベストセラー小説の映画化だ。

 長野県のとある精神病院には、さまざまな事情の患者たちが暮らしている。刑の執行が失敗し生きながらえた元・死刑囚、梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)もその一人。陶芸に打ち込み、患者たちから慕われる穏やかな態度からは殺人犯の過去は見えない。病院から自由に外出できるチュウさん(綾野剛)は、幻聴に苦しむ元サラリーマン。新たに女子高生の由紀(小松菜奈)が父親のDVが原因で入院してきた。彼らが心を通わせ始めた矢先、思いがけない事件が起きてしまう。

 秀丸、チュウさん、由紀。3人とも一見では精神を患っているようには見えないが、次第に明かされる壮絶な過去は悲惨だ。7キロ減量して役に取り組んだという笑福亭鶴瓶をはじめ綾野剛、小松菜奈の演技が素晴らしい。
 
 社会から冷たい目で見られる精神の病。なぜ人はいとも簡単に他人を傷つけ追い込むのか。淡々と描かれる患者たちが抱える闇は、殺伐とした現代社会が作り出したものかもしれない。どちらが異常でどちらが正常なのか。病院の扉は彼らを閉じ込めるのではなく防御壁のようにさえ見える。

自分の心の病に苦しみながらも明るく振る舞い、他人の痛みを思いやる秀丸の気持ちが切ない。 

 原作に描かれた繊細な人間ドラマにほれ込み11年かけて映画化を実現したのは、日本アカデミー賞最優秀監督賞をはじめ海外からも高く評価された「愛を乞う人」(1998年)の平山秀幸監督だ。監督自ら脚本も手掛け、それぞれの心の揺らぎを丁寧にすくいとってゆく。 

 閉ざされた場所から再び社会へ出てゆく勇気。それぞれの朝というタイトルに未来への希望が込められているようだ。

 映画撮影では初めて長野県にある国立の精神科病棟で実際にロケが行われている。
=1時間57分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野千石劇場((電)226・7665)で11月1日(金)から公開予定
(2019年10月26日掲載)

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