荒野の誓い ~米国西部の開拓地 任務に次々と危険

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 米国の西部開拓史は先住民であるインディアンとの戦いの歴史でもあった。白人に敗れたインディアンは土地を奪われ居留地へと追いやられた。その後も長い間人種差別を受け続けることになる。

 西部劇全盛のハリウッドではインディアンは悪役。奇声を上げて白人を襲い頭の皮を剥ぐ、残虐な存在として描かれてきた。そんなステレオタイプな設定に抗議した名優マーロン・ブランドは、1972年のアカデミー賞授賞式で受賞を拒否したことも話題になった。 何が善で何が悪なのか。米国の負の歴史に挑んだのがスコット・クーパー監督の「荒野の誓い」だ。 

 1892年、米国西部の開拓地。南北戦争・インディアン戦争で戦い続けた英雄、騎兵隊のジョー・ブロッカー大尉(クリスチャン・ベール)が新たに命じられた任務は、がんで余命わずかとなったシャイアン族の首長イエロー・ホークと家族を居留地である故郷のモンタナに送り届けること。仲間を殺された恨みを抱えながら、かつての宿敵を守るという皮肉な旅に出たジョーに、次々と危険が襲い掛かる。

 平然と野蛮人とさげすみ悪意に満ちた白人もいれば、故郷を追われた先住民に同情する白人もいる。脚本も手掛けたクーパー監督は先住民たちを正確に描写することを心掛け、彼らの言語や歴史、文化に深く配慮したそうだ。実際にシャイアン族の首長やコマンチ族のコンサルタントが作品に関わっている。

 コマンチ族の残党が移住を拒否して虐殺を続けていたという。この物語にも狂暴なコマンチ族に家族を殺され、ただ一人生き延びた開拓民の女性ロザリー(ロザムンド・パイク)が旅に加わる。初めはホーク一家の姿におびえていたロザリーが、旅を続けるうちに次第に心を通わせてゆく。そして喪失感にとらわれているジョーもまた、イエロー・ホークと共に戦うことで尊厳と信頼で結ばれてゆく。敵対から生まれた憎悪が許しに目覚めてゆく心の旅路となるのだ。

 撮影監督を日本人の高柳雅暢が手掛け、スクリーンに映し出された雄大な西部の風景も見どころだ。
=2時間15分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野ロキシー((電)232・3016)で11月16日(土)から公開
(2019年11月9日掲載)

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