決算!忠臣蔵 ~金がかかる敵討ち 笑いで悲壮感消す

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(C)2019「決算!忠臣蔵」製作委員会

 時は元禄14(1701)年、播州赤穂藩主の浅野内匠頭が江戸城・松の廊下で刃傷事件を起こし即日切腹、藩はお取りつぶしとなった。赤穂事件の始まりである。赤穂浪士四十七人が宿敵、吉良上野介の首を取り主君の敵討ちを果たした討ち入りは、江戸庶民の喝采を浴び「忠臣蔵」として今も語り継がれている。

 「決算!忠臣蔵」の原作は、山本博文・東京大学教授の「『忠臣蔵』の決算書」。大石内蔵助が実際に残した「預置候金銀請払帳(あずかりおきそうろうきんぎんうけはらいちょう)」から、1年9カ月に及ぶ藩士たちの動向を読み解いた歴史の研究書だ。脚本も手掛けた中村義洋監督は、「コメディーで」という難題に見事応え、誰もが知る一大悲劇を定説をくつがえす群像劇へと変身させた。

 開城か籠城か。「武士の一分」を果たそうといきり立つ藩士をいさめ、御家再興を願ったもののかなわず、敵討ちへと舵(かじ)を取り直したことで、お金がかかる敵討ちプロジェクトが動き出す。

 「なんでやねん!」と怒り、ぼやく大石内蔵助役を堤真一。「ちゃいますの」と冷静に切り返す勘定方・矢頭長助役は岡村隆史。監督が一番好きなキャラクターという大高源五役の浜田岳ら、俳優とお笑い芸人たちの間に飛び交う関西弁が悲壮感をあっさりと消し去る。

 討ち入りの予算総額は800両、現代の貨幣価値に換算するとおよそ9500万円。亡き内匠頭の正室瑤泉院(ようぜいいん=石原さとみ)の持参金が使われた。金銭感覚の違いからどんどんお金が減るなか、さらに内蔵助がもん絶しそうになるのが、監督お気に入りの「深川会議」のシーンだ。

 討ち入り直前の段取りを話し合うのだが、武具に始まり衣装やら小道具やら、それぞれの思惑で費用が発生するごとに残金が消えてゆく。画面にお金が表示されるたびに、右往左往するそろばん侍に抱腹絶倒してしまう。

 史実を大切にしながら素晴らしいイマジネーションで一大プロジェクトを膨らませた中村監督。現代人の共感を大いに呼ぶ、これまでに見たことがない忠臣蔵が誕生した。
=2時間5分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
 長野グランドシネマズ((電)233・3415)で公開中
(2019年11月30日掲載)

写真=舞台あいさつで長野を訪れた中村義洋監督

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