グレース・オブ・ゴッド 告発の時 ~被害者の視点から 性的虐待事件描く

0822-shinema.jpg
(C)2018-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-MARS FILMS-France 2 CINEMA-PLAYTIMEPRODUCTION-SCOPE


 映画「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」は、ヨーロッパで大きな社会問題となった、フランスのカトリック教会神父による少年たちへの性的虐待事件を題材に、フランソワ・オゾン監督が被害者の視点から描いたヒューマンドラマだ。

 リヨンで妻と子どもたちと暮らすアレクサンドル(メルヴィル・プポー)は、幼少期の自分に性的虐待をしたプレナ神父が、今も子どもたちと接する立場にいることを偶然知り驚く。厳正な対処を約束したはずの教会側が見て見ぬふりをしていたことに気づき、ついに告発を決意する。少年時代に同様の体験をしたフランソワ(ドゥニ・メノーシェ)やエマニュエル(スワン・アルロー)も名乗りを上げ、被害者の輪が広がるが、沈黙を破った代償が彼らを待ち受けていた。

 被害者たちのその後の人生はさまざまだ。トラウマと向き合い乗り越えた人もいれば、忌まわしい記憶を拭い切れないまま苦しむ人もいた。オゾン監督は子ども時代に心に傷を受けた彼らの魂と、彼らを支える家族に寄り添いながら、群像劇として、こまやかな脚本を紡いだ。

 20年にわたり、教区を変えながら80人以上の少年たちに性的暴力を働いたとして、現在も裁判が進行中の「プレナ神父事件」。この映画をめぐって、プレナ神父から上映差し止めの裁判まで起こされたそうだ。教会での撮影も禁止されたという。

 これと似た事件は米国でも起きており、ボストン・グローブ紙は90人近い神父のスキャンダルを暴いた。この実話を基に、少年への性的虐待事件を中心に、教会の隠蔽体質とジャーナリズムの本質を問うた「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)は、米アカデミー賞作品賞を受賞した。

 被害者の苦しみと勇気に視点をおいた本作は、フランス映画界最大の賞セザール賞で7部門にノミネート。被害者を演じた男優3人がそろってノミネートされ、スワン・アルローが助演男優賞を受賞した。ベルリン国際映画祭でも審査員グランプリの銀熊賞受賞と高い評価となった。

=2時間17分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
 長野千石劇場((電)226・7665)で8月28日(金)から公開
(2020年8月22日掲載)

最近の記事

糸 ~名曲に着想を得た 胸打つ愛のドラマ
(C)2020映画「糸」製作委員会 シン…
グレース・オブ・ゴッド 告発の時 ~被害者の視点から 性的虐待事件描く
(C)2018-MANDARIN PRO…
チア・アップ! 高齢女性チームが勇気とパワー発揮
(C)2019 POMS PICTURE…