グランド・ジャーニー ~ゲーム好きの少年 渡り鳥と空の旅へ

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 乱獲が原因で絶滅の危機に瀕しているカリガネガンを救え! 映画「グランド・ジャーニー」は、人間が人工孵(ふ)化した鳥たちと一緒に飛んで、安全な飛行ルートを教えるという実話を基に生まれた。父と息子の絆と家族の再生を描いた冒険物語だ。

 南フランスに住む気象学者で鳥類保護活動家のクリスチャン(ジャン=ポール・ルーブ)は、別れた妻と暮らす14歳の息子トマと5週間のバカンスを一緒に過ごすことになった。オンラインゲームに夢中で田舎暮らしにうんざりしていたトマだったが、カリガネガンの孵化の場面に遭遇したことをきっかけに、ひなの親代わりとしてかわいがるようになる。 

 成鳥になり「渡り」を教える日が近づくが、思いがけないトラブルから、トマ一人で飛び立ってしまう。少年と渡り鳥たちの旅は人々の注目を集めるが、いくつもの危険が待ち受けていた。

 主人公のモデルとなったクリスチャン・ムレクは超軽量飛行機を独自開発し、かつて鳥たちが繁殖していたノルウェーのラップランドとフランスの間を渡るという、無謀とも思えるプロジェクトを10年以上かけて成功させた人物。ドキュメンタリー映画「WATARIDORI」(2003年)の撮影・製作や、本作では脚本に関わっている。

 ラップランドを目指して、ヨーロッパの大空をゆうゆうと羽ばたく渡り鳥たち。嵐のシーン以外、ほぼコンピューターグラフィックス(CG)なしで撮影されたというから驚きだ。

 自身も冒険家で地球保護活動家であるニコラ・ヴァニエ監督は「多くの人に世界の美しさを見せて伝えたい」と語る。その熱い思いが捉えるのは地球の大いなる遺産。眼下に広がる壮大な風景は、まるで観客自身が鳥になったかのような浮遊感と高揚感に包まれる。映画が持つ映像体験の素晴らしさに言葉を失ってしまう。

 ゲーム機の小さな画面から本物の世界へと、少年が冒険を通して知る生命の重み。少年から青年へと成長していく姿に心が震える。

 子どもたちの情操を養う優れた映画として、長野県の推薦映画に認定されている。
   =1時間53分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
 長野ロキシー((電)232・3016)で26日(土)から公開
(2020年9月19日掲載)

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