ファヒム パリが見た奇跡 ~チェスの天才少年 未来をつかみ取る

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(C)POLO-EDDY BRIERE. 

 2013年の世界児童チェス大会で、バングラデシュ出身の一人の少年の大活躍が注目を集めた。「ファヒム パリが見た奇跡」は、チェスの天才少年の波瀾万丈の実話の映画化だ。

 バングラデシュの首都ダッカに住む8歳の少年ファヒムは大人顔負けのチェスの名手。政変に身の危険を感じた父親は妻を残し、ファヒムを連れてフランスのパリへ向かう。難民申請の許可を待つ間、フランスの有名なチェスのコーチ、シルヴァン(ジェラール・ドパルデュー)の下で厳しい指導を受けトーナメントを目指すが、難民申請は却下され強制送還の危機に見舞われる。

 チェスの起源は1500年以上前の古代インドの「チャトランガ」というボードゲームにさかのぼるという。戦争好きの王に戦いをやめさせるためゲームを作り献上したのが始まりとされる。それだけに、知恵と精神を集中させて戦う競技シーンは緊迫感にあふれている。

 「チャトランガ」は世界に広まり日本の将棋もその流れの一つと聞くと、チェスのルールを知らなくても、ぐっと親近感が湧く。フランスのチェス人気は高く、才能のある子にはコーチがつくそうだ。かつて名選手だったコーチ、シルヴァンの熱意とユニークな指導法がファヒムの才能を開花させてゆく。

 そんなチェスのはらはらする面白さと対照的に描かれるのは、人道支援に取り組むフランス社会の現状だ。ファヒムが身を寄せる難民センターは、さまざまな国からの移民や難民を受け入れるが、期限が切れるとホームレスとなり路上で暮らす人々も多いそうだ。世界的な観光地で目にするホームレスの姿に、観光国フランスとは全く違う表情が見えてくる。母国から亡命し、言語も習慣も違う国で生きることの困難。果たしてファヒム父子は困難を乗り越えることができるのか。

 その半生をつづった自伝が出版され、テレビ番組に出演したファヒムを偶然見たピエール=フランソワ・マルタン=ラバル監督は映画化を決意したのだそうだ。自ら人生を変え未来をつかみ取った少年の奇跡はまさにドラマチックだ。
=1時間47分

 (日本映画ペンクラブ会員、ライター)

 長野千石劇場((電)226・7665)で公開中

(2020年9月26日号掲載)

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