浅田家!~被災地で目にした 家族写真のドラマ

 皆さんは家族写真を撮っているだろうか? 何げないスナップではなく、家族全員の視線が一つになった記念写真。「浅田家!」は、写真家浅田政志さんの「家族」をモチーフにした2冊の写真集を原案に紡がれた家族の絆の物語だ。

 浅田家は家計を支える看護師の母・順子(風吹ジュン)、主夫として家事を引き受ける父・章(平田満)、長男の幸宏(妻夫木聡)と次男の政志(二宮和也)の4人家族。一家の心配事は政志が定職につかず、ぐうたらしていること。ようやく本気になったのが幼い頃から好きだった写真を撮ることだった。しかもテーマに選んだのは家族がなりたかった職業のコスプレ写真。その発想のユニークさが認められプロカメラマンの道が開ける。

 全国から家族写真の依頼を受け軌道に乗り始めたが、東日本大震災が発生。かつて撮影した家族の安否を気遣い被災地へ向かった政志が目にしたのは、家族や家を失い、悲嘆にくれる人々の姿だった。

 ダメ息子のように見えながら人間的な優しさは人一倍。豊かな発想力から生まれた家族写真には、一枚一枚に家族の歴史とドラマが写し出されている。

 物語のもう一つの核となるエピソードが、東日本大震災で自然発生的に行われた、津波で泥だらけになった写真を洗い返却するボランティア活動だ。

 1年前、長野も台風19号災害に見舞われたばかり。写真館の協力で汚れた写真が洗浄され、被災者の元へと返された。流された家族の思い出が再びよみがえる喜び。写真の持つ力と意味が心の奥深く届いた瞬間だ。

 「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年)で日本アカデミー賞優秀監督賞などに輝いた中野量太監督が脚本も手掛けている。家族をテーマに作品を撮る中野監督が、こだわりを見せたのが本物の家族感。役者たちのなりきりぶりは、エンディングで映し出されるオリジナルの浅田家の家族写真とうり二つで、思わず吹き出してしまう。しかも撮影したのは浅田氏本人だそうだ。

 なりたかった自分になれたか。悔いのない人生を送っているか。カメラの向こうからそんな声が聞こえてくる。
=2時間7分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
 長野グランドシネマズ((電)233・3415)で公開中
(2020年10月10日号掲載)

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