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(C)2019 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」との名言を残したトーマス・エジソン。蓄音機、白熱電球、映写機など84年の生涯で1300もの発明をしたエジソンは、「発明王」と呼ばれただけでなく、特許をめぐり裁判を数多く起こし「訴訟王」とも呼ばれた。映画「エジソンズ・ゲーム」の原題は、「ザ・カレント・ウォー(電流戦争)」。電力の供給システムをめぐる科学者たちの戦いの物語だ。

 19世紀末のアメリカ。天才発明家として称賛を集めるエジソン(ベネディクト・カンバーバッチ)にライバルが現れる。直流による送電方式を唱えるエジソンに対し、裕福な実業家のジョージ・ウェスティングハウス(マイケル・シャノン)は、交流のほうが安価で優れていると実演会で証明してみせたのだ。あくまでも直流にこだわり続けるエジソンは、悪意に満ちた情報操作でマスコミを誘導しようとする。 

 伝記映画のようでありながら、強く引き付けられるのはプライドと意地をかけた男たちの熱いバトルだ。己の技術を信じるあまり、対立する相手を徹底的に潰そうとするエジソンの傲慢さ。ひらめきを形にするために寝食を忘れ没頭する。そんな努力の人であるがゆえに、私生活では家庭を顧みない未熟さが、妻を孤独へと追い詰めていた。偉人伝に登場する天才肌で努力家のエジソンとは、やや趣きの異なる一面に驚かされる。

 エジソンとの確執から袂を分かったもう一人の天才科学者テスラ(ニコラス・ホルト)のエピソードも切ない。生き馬の目を抜くようなビジネスの厳しさは現代にも通ずる。

 当時の最先端の科学技術が集まったシカゴ万博の躍動と変革の時代。漆黒の闇から一転、電球が一斉に点灯し、まぶしいばかりの明るさに圧倒されるシーンが美しい。当時の人々にとって電気は魔法のように見えたにちがいない。

 後世に語り継がれる戦いが未来の発展につながり、多大な功績を残した。彼らの発明の数々の恩恵にあずかる今の私たち。技術革新の陰にあった男たちの頭脳戦はなんとドラマチックなことだろう。
=1時間48分

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野グランドシネマズ((電)233・3415)で4月3日(金)から公開
(2020年3月28日掲載)
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(C)2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

 自分たちの手で体制を変革する。そのためには暴力も辞さない。血気盛んな学生たちによる大学紛争の嵐が吹き荒れた。1969(昭和44)年5月13日、戦後の日本文学を代表する作家の一人三島由紀夫は、東大全共闘が主催する討論会に招かれ東大駒場キャンパスに乗り込んだ。

 「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」は、TBSが撮影、保管していた伝説の討論会の貴重な映像を基にしたドキュメンタリー映画だ。

 千人を超える学生たちが待ち構える中、三島由紀夫が900番教室に姿を現す。三島を見つめる真剣な顔、顔、顔。学生と三島との熱い論戦の火ぶたが切られた。学生たちの追及に論理的に反論しながら、どこか楽しんでいるかのような大人の男としての風格がにじむ。たばこを吸い余裕たっぷりに学生たちを見回す三島。鍛え上げた肉体に宿る知性と若々しさ。圧倒的な存在感に目が吸い寄せられる。

 討論会の翌年の1970年11月25日、三島は自ら主宰する「楯の会」の会員と、陸上自衛隊市ケ谷駐屯地に押しかけ、演説して割腹、自決した。享年45歳。この衝撃的なニュースは三島の存在の大きさを改めて世界に知らしめた。三島の心の奥深くに沈殿していたものは一体何だったのか。

 過去から現代へと三島の記憶を紡ぐのは、その場にいた生き証人だ。三島と激論を交わした学生たち。東大全共闘随一の論客と言われた芥正彦さんは今も眼光鋭く、本質をつく迫力は変わらない。三島の身を守るため教室にいた楯の会のメンバー。熱い時間を最前列で見つめた取材陣。

 さらに三島文学に造詣の深い小説家、社会学者、交流のあった著名人らが当時の時代背景や三島の人間性などを語る。これまで知られることのなかった三島の側面が見えてくる。瀬戸内寂聴さんは、女性ならではの目線で三島を語る。

 死後50年、時の流れの速さに驚く。三島が今の日本を見たら何を訴えるのだろうか。
=1時間48分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野グランドシネマズ((電)233・3415)で公開中
(2020年3月21日掲載)
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(C)(2019) TRESOR FILMS  - FRANCE 2 CINEMA - MARS FILMS- WILD BUNCH  - LES PRODUCTIONS DU TRESOR  - ARTEMIS PRODUCTIONS

 映画やコミック、小説など、発売前に海賊版や流出で巨額な損失が発生する事件が起きている。「9人の翻訳家 囚(とら)われたベストセラー」は、現代の社会問題を絡ませたフランス・ベルギー合作の知的ミステリー映画だ。

 ファン待望の世界的ベストセラー「デダリュス」3部作が完結した。権利を獲得した出版社の社長アングストロームの命令で世界同時発売されることになり、9カ国の翻訳者が集められた。そこは外部からの接触も情報も一切遮断された要塞のような地下室。監禁状態の翻訳者たちに渡されるのは毎日わずか20ページの原稿だけだ。だが厳重なセキュリティーにもかかわらず、原稿を盗んだという犯人から500万ユーロを要求する強迫メールが社長に送りつけられる。どうやって原稿が流出したのか。果たして真犯人は誰なのか。地下室は疑念と不穏な空気に包まれてゆく。

 普段知ることがない翻訳の世界の裏側を描いたこの物語は、世界的なベストセラー作家ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ4作目、「インフェルノ」の出版時に、秘密の地下室に12人の翻訳者を隔離したという実話から生まれたというから、まるっきり荒唐無稽な話ではないのが面白い。 

 ロシア語、イタリア語、デンマーク語、スペイン語、ドイツ語、中国語、ポルトガル語、ギリシャ語、そして英語。選ばれたのは有能だがどこか秘密を抱えた翻訳者たちだ。そして誰も正体を知らない謎の著者の存在が、もう一つのミステリーとして影を落とす。厳しい監視下で精神的に追い詰められてゆく翻訳者たちの密室劇にとどまらず、いくつもの謎が絡み合い、ミステリー好きにはたまらない展開が待ち受ける。

 脚本と監督を手掛けたのは「タイピスト!」(2012年)で注目されたフランスのレジス・ロワンサル監督。さまざまな言語が飛び交うだけに、役者のキャスティングに1年もかかったそうだ。それだけに一癖も二癖もある顔ぶれがストーリーの危うい雰囲気を醸し出す。

 音楽は日本の三宅純が手掛けている。
=1時間45分
 (日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野千石劇場((電)226・7665)で20日(金)から公開
(C) 2020『Fukushima 50』製作委員会

 2011年3月11日、日本を襲ったマグニチュード9・0、最大震度7という巨大地震は東日本を中心に未曽有の悲劇をもたらした。さらに追い打ちをかけるように太平洋から押し寄せた大津波が、東京電力福島第1原子力発電所をのみ込んだ。
 「Fukushima50」は壊滅的な危機の中で制御室に踏みとどまり、戦い続けた50人の作業員たちを追った門田隆将氏のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を原作に映画化された。

 福島第1原発の所長、吉田昌郎(渡辺謙)の元に、中央制御室の当直長、伊崎利夫(佐藤浩市)から緊迫した状況が知らされる。想定外の津波で原発の電源を喪失。冷却不能となった原子炉はメルトダウン(炉心溶融)を起こし、大量の放射性物質が拡散する危機に直面していた。作業員たちは手動で原子炉の圧力を下げるベントを行う必要に迫られる。一刻を争う中、現場の実態を把握できない東京電力の本社と政治家たちの介入で時間が失われてゆく。

 高い放射線量を浴びる死の危険を顧みず、次々と襲いかかるトラブルと戦いながら何度も突入を繰り返した作業員たち。その多くが地元福島出身だったという。最後まで諦めずに故郷を、家族を守るという熱い思いと、仕事への責任感に頭が下がる。この勇敢な人々を海外メディアは「フクシマ50」とたたえたそうだ。

 福島第1原発の吉田昌郎所長はじめ、著者が独自取材でさまざまなジャンルの人々から集めた証言から見えてきた原発事故の真実。原作を読み進むうちに、報道では知りえなかった想像以上の当時の混乱と恐怖が、じわじわと湧き上がってきた。

 「最前線で命を懸けた彼らの姿を世の中に知らせる映画を作りたい」と、メガホンをとったのは「沈まぬ太陽」(2009年)の若松節朗監督だ。リアリティーにこだわり再現された災害現場と、作りものではない人間ドラマが息苦しいほどの緊張と感動をもたらす。

 9年後の今も帰郷がかなわない被災者たちがいることに心が痛む。
    =2時間2分

(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
 長野グランドシネマズ((電)233・3415)で3月6日(金)より公開

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(C)Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

 17歳の時、「オズの魔法使い」(1939年)でスクリーンデビューしたジュディ・ガーランドは、ドロシー役で一躍人気者となり、主題歌の「虹の彼方(かなた)に」はジュディの生涯のテーマ曲となった。映画「ジュディ 虹の彼方に」は、ハリウッドの黄金期を代表するミュージカル女優、ジュディ・ガーランドの波乱の人生を描いた傑作だ。

 1968年、巡業のステージで糊口をしのいでいたジュディ(レネー・ゼルウィガー)。愛する子どもたちのために、破産寸前から一念発起しイギリスに渡ったジュディはクラブのステージが評判となり再び人気を集める。再婚し新しい人生を歩み始めたかに見えたが、精神的なもろさからトラブルを起こし自らを追い詰めてしまう。

 なぜジュディが情緒不安定になったのか。なぜ破滅的な行動を起こすのか。回想シーンで描かれるのは映画スタジオから厳しく管理され、学校生活も友人もなく仕事漬けの日々。少女時代を失った代償はあまりにも大きかった。

 だが、プロ魂あふれたステージから、「ミス・ショー・ビジネス」と呼ばれ、ファンの前では輝きに満ちていた。

 レネー・ゼルウィガーはジュディになりきるために、1年かけて独特のなまりや声色、パフォーマンスまでマスターして劇中の曲をすべて歌い上げたそうだ。ステージでの観客との軽妙なやりとり。「トロリー・ソング」から「バイ・マイセルフ」「カム・レイン・オア・カム・シャイン」そして「虹の彼方に」など、ミュージカルのヒットナンバーを歌うシーンの素晴らしさは、まるでジュディがよみがえったかのような感覚におちいるほどだ。

 ジュディ・ガーランドという稀有(けう)な存在を余すことなく体現したレネー・ゼルウィガーは、ゴールデン・グローブ賞に続き、アカデミー賞でも見事に主演女優賞に輝いた。

 ジュディは1969年、47歳という若さで亡くなる。ファンに愛され続けたスーパースターの栄光と孤独に涙せずにいられない。
   =1時間59分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野グランドシネマズ((電)233・3415)で3月6日(金)から公開
(2020年2月22日掲載)
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(C)Lions Gate Entertainment Inc.

 「♯MeToo」運動を覚えているだろうか。セクハラの被害女性たちが泣き寝入りせず勇気を持って「私も」と立ち上がったのだ。映画「スキャンダル」は2016年に発覚した、メディア王のセクハラ事件の実話に基づく。

 才色兼備の元ミス・アメリカでFOXニュースのベテランキャスター、グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)が、一方的に首を言い渡したCEOのロジャー・エイルズをセクハラで告訴した。被害を受けた女性たちが追従して名乗りでることを期待したが、不気味な沈黙が続く。しかもグレッチェンの部下で野心家のケイラ(マーゴット・ロビー)はチャンスとばかりにロジャーのオフィスを訪ねる。FOXニュースで13年間アンカーを務める人気キャスターのメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)は、討論会でトランプ候補の女性蔑視発言を追及したことで命の危険にさらされていた。セクハラへの弾圧を知るメーガンは告発に複雑な思いを抱く。

 立場を利用して女性たちの尊厳を奪ったロジャー・エイルズとはどんな人物なのか。ニュース専門チャンネルFOXニュースを全米一の視聴率を誇る局に成長させ、ニクソン、レーガン、ブッシュら歴代共和党大統領のメディアコンサルタントとして(辣)(らつ)(腕)(わん)をふるい、トランプ候補の助言役となった。本作では当時の大統領選挙の裏側も垣間見えて興味深い。

 話題の一つがメーガン本人と見分けがつかないほどうり二つのシャーリーズ・セロンのそっくりさんぶりだ。特殊メークを担当したカズ・ヒロは「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」(2017年)で、ゲイリー・オールドマンをチャーチルに変身させ、日本人として初めてアカデミー賞メーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘さん。本作でも再び同賞に輝いた。

 実在の人物を演じる難役をこなしたセロンは、アカデミー賞主演女優賞にノミネート、マーゴット・ロビーも助演女優賞にノミネートされた。美しさだけでなく3人の女優たちの熱い闘いに心をわしづかみされる。

    =1時間49分
 (日本映画ペンクラブ会員、ライター)
 長野千石劇場((電)226・7665)で21日(金)から公開

(2020年2月15日掲載)
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(C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

 「1917 命をかけた伝令」は第1次世界大戦のフランスを舞台にした戦争映画。「アメリカン・ビューティー」(1999年)でオスカーを受賞した名匠サム・メンデス監督が、実際に従軍した祖父から聞いた体験談をもとに自ら脚本もてがけた。

 1917年4月。戦況が厳しさを増す中、ドイツ軍が西部戦線から突如姿を消した。連合国軍の追撃の決行が明朝に迫る中、撤退のように見せかけて待ち伏せするドイツ軍のわなと判明する。通信手段を断たれ、作戦を中止するには伝令しか残されていない。1600人の兵士の命を救うべく、伝令に選ばれたイギリス人の若き兵士スコフィールドとブレイクの2人は、敵地を駆け抜ける。

 タイムリミットが迫るなか、幾たびもの危機と試練が2人を襲う。彼らが見る戦場は残酷な死の世界そのものだ。

 おびただしい砲弾の跡。水たまりに浮かぶ泥まみれの死体。人間だけでなく馬の死骸も横たわる。もぬけの殻となったドイツ軍の塹壕の不気味な静寂にスコフィールドとブレイクの息遣いが緊張を高めていく。

 地雷や爆弾、そしてスナイパー。わなが仕掛けられたドイツ軍の占領地を通り抜け、ひたすら走る2人の姿をカメラは追い続ける。一瞬たりとも気を抜けない場面の連続と臨場感を観客に一緒に体験してほしいと、メンデス監督が挑んだのはワンカットで見せる長回しの撮影スタイルだ。彼らの姿を見守り、いつの間にか彼らの視線で戦場を目撃するという不思議な感覚。メンデス監督の壮大なプロジェクトを実現した撮影監督のロジャー・ディーキンスは、驚異的なカメラワークで数多くの映画賞で撮影賞を受賞した。

 主人公の2人の兵士には役柄に合わせて若手の男優が選ばれたが、上官役にはコリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロングら、実力派が顔をそろえる。

 先日のゴールデングローブ賞では作品賞と監督賞の主要2部門を受賞。アカデミー賞では作品賞をはじめ、監督、脚本など10部門にノミネートされている。
    =1時間59分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野グランドシネマズ((電)233・3415)で14日(金)より公開

(2020年2月8日掲載)

 1981年のロンドン初演以来、ロングラン上演されているミュージカル「キャッツ」。この舞台の名作を、ミュージカル映画「レ・ミゼラブル」のトム・フーパー監督が実写映画化し、魅力的な作品に仕上げた。

 ごみ捨て場に捨てられた白猫ヴィクトリア(フランチェスカ・ヘイワード)の前に現れたのは、人間に飼いならされることを拒否する"ジェリクルキャッツ"たち。再び生きることを許される、たった1匹の猫が選ばれる特別な満月の夜。集まった猫たちが得意のダンスと歌を繰り広げる。 

 もちろん猫たちは人間が扮しているのだが、役者たちの表情をそのまま生かして猫に変身させる、最先端の視覚効果(VFX)技術が使われている。猫特有のしぐさや動きを巧みに取り入れたダンスや歌を夢中になって見ているうちに、本物の猫に見えてくるから面白い。

 物語に登場する個性的な猫たちに扮するのは映画、ダンス、音楽などの世界で活躍するトップスターたちだ。ヴィクトリア役のフランチェスカ・ヘイワードは英国ロイヤルバレエ団のプリンシパルダンサーだけに、のびやかな手足としなやかな動きがなんと優美なことか。おどおどしていた子猫が好奇心を抑えられず夢中になってゆく。豊かな表情と喜びや悲しみを映す無垢な瞳が印象的だ。

 猫たちに尊敬されている長老オールドデュトロノミー役のジュディ・デンチは貫禄たっぷりに歌声を披露している。名曲「メモリー」を震えるような魂の歌声で圧倒するのは、孤独な猫グリザベラを演ずるジェニファー・ハドソン。妖艶な魅力を振りまくボンバルリーナ役のテイラー・スウィフトは、製作総指揮にも名を連ねた作曲のアンドリュー・ロイド=ウェバーと共同で新曲を提供し、エンドソングも歌っている。

 物語の舞台は1930年代のロンドン。猫目線で描かれているだけに、彼らが住んでいたという設定のソーホーの劇場街の建物や家具の巨大なセットは、猫の身長の2.5倍に作られているそうだ。

 誰かに愛されたい。猫たちの切ない願いが心にしみてくる。不思議な空間に引き込まれてゆく。

   =1時間50分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野グランドシネマズ((電)233・3415)で公開中
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(C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

 あどけない10歳の少年の目を通して、ユーモアたっぷりに戦争の本質を鋭く突く―。「ジョジョ・ラビット」は、トロント国際映画祭観客賞を受賞したほか、ゴールデングローブ賞でも主要2部門にノミネートされた話題作だ。

 第2次大戦下のドイツ。ヒトラーに心酔する少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、ナチス党の青少年組織ヒトラーユーゲントの訓練に参加する。教官からウサギを殺せと命令されるが、心優しいジョジョがひるんだため、臆病者の「ジョジョ・ラビット」と不名誉なあだ名で呼ばれるはめに。落ち込むジョジョを慰め笑顔にさせるのは、いつも前向きな母親のロージー(スカーレット・ヨハンソン)だ。ひそかにレジスタンス活動をするロージーは、自宅の隠し部屋にユダヤ人の少女エルサをかくまっていた。偶然、気づいたジョジョは混乱するが、あることを思いつく。

 孤独で気弱なジョジョがつくり出した空想上の友達は、なんとアドルフ・ヒトラーその人。なにかにつけてジョジョの周りに現れ、操ろうとするが、その極端な動きはコミカルで、「チャップリンの独裁者」(1940年)をほうふつとさせる。しかもヒトラーに扮するのは、なんとタイカ・ワイティティ監督自身だ。これまでも監督だけでなく、俳優、脚本も手掛けるマルチな才能で注目を集めている。

 「アーリア人は優秀」「ユダヤ人は下等な悪魔」「本を燃やせ!」。純真な子どもの時から教え込む、洗脳教育の恐ろしさ。大人たちまでがプロパガンダに誘導され、大義を信じ込んでいたということに、当時のドイツ全体を覆う狂気と愚かさが伝わる。笑いと憎悪を融合させナチズムの非道さを風刺するという、これまでにない切り口はコメディー映画というジャンルを飛び越えて、見事な人間ドラマになった。こんなユニークな戦争の描き方があったのかと驚かされる。

 ジョジョを演じたローマン・グリフィン・デイビスは映画初出演。受賞は逃したものの先日開催されたゴールデングローブ賞に、わずか12歳で主演男優賞にノミネートされたという天才ぶりだ。
=1時間49分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野グランドシネマズ((電)233・3415)で公開中
(2020年1月18日掲載)
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(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

 韓国映画として史上初のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝いた「パラサイト半地下の家族」。「グエムル 漢江の怪物」(2006年)、「母なる証明」(09年)などで知られる韓国の奇才ポン・ジュノ監督の最新作だ。

 日の光もろくに当たらず電波も届かない、半地下の部屋で暮らすキム一家は家族4人が全員失業中。一家の大黒柱ギテク(ソン・ガンホ)は事業に失敗し、「甲斐性なし」と妻にののしられている。まず一抜けしたのが大学受験に失敗し続けている浪人生の長男ギウ(チェ・ウシク)。友人の名門大学生に家庭教師の仕事を紹介され、高台の大豪邸に暮らすIT企業の社長パク家に面接に訪れる。偽りの学歴ながら受験のスキルにたけるギウはパク夫人の心を捉え、見事に女子高生ダヘの家庭教師に収まった。子どもの教育に不安を抱える若いパク夫人に、言葉巧みに紹介したのは美大生志望の妹のギジョン。落ち着きのない末息子ダソンの美術家庭教師となり、次第にパク家に侵食していく。

 ニュース映像などでよく目にする韓国社会のひずみ。貧富の格差は裕福なパク家と貧乏なキム家そのままだ。モダンで洗練された家と薄暗くごみためのような半地下の部屋。持つ者と持たざる者の悲哀が、彼らの生活ぶりに描かれる。過酷な受験戦争を勝ち抜いた者が勝者となり、肩書が人間性を押しつぶし階級社会へと押しやる社会の残酷さがスクリーンからにじみ出る。羨望やねたみ、怒りが人間を突き動かす瞬間を捉えるポン・ジュノ監督のなんと巧みなことか。

 物語は人間ドラマ、サスペンス、コメディー、社会風刺、家族愛、さまざまな旋律がせめぎあい、時には不気味なハーモニーを奏でる。最後に残るのはどんな感情なのか。自分の心にパラサイトした何者かがうめき声をあげる。カンヌ国際映画祭で審査員が満場一致で選んだということがうなずける激しく強い物語だ。
 ポン・ジュノ監督自らネタバレを禁止するほど、予想のつかない展開に身をゆだねるしかない。
=2時間12分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
長野ロキシー((電)232・3016)で公開中
(2020年1月11日掲載)