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(C)Twentieth Century Fox Film Corporation

 19世紀半ばのアメリカで、ショービジネスの礎を築いた実在の興行師P・T・バーナム。「グレイテスト・ショーマン」は、彼のショーにかける情熱と家族への愛を描いたオリジナル・ミュージカルだ。

 貧しい育ちのバーナム(ヒュー・ジャックマン)は、幼なじみで名家の令嬢チャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)と身分の違いを超えて結ばれる。かわいい娘にも恵まれ、豊かな生活を家族にさせたいと願うバーナムは、ショービジネスの世界に飛び込む。斬新なアイデアでショーをヒットさせるが、さらなる高みを目指すバーナムに思わぬ危険が待ち受けていた。

 バーナムが観客に差し出したのは、社会から疎外され、陰に隠れていた人々だ。男以上に立派なひげが生える女や、大人なのに体は少年のままの小人。一歩間違えれば、奇形を集めた見世物小屋の際どさを、個性あふれるパフォーマーとしてショーの世界で輝かせたバーナム。卑屈だった彼らが自信に満ちて、力強く歌い踊るオープニングから一気に物語の世界に引き込まれてしまう。

 「シカゴ」(2002年)「ドリームガールズ」(06年)「美女と野獣」(17年)などのミュージカル映画を手掛けたビル・コンドンが脚本を担当。「ラ・ラ・ランド」(17年)でアカデミー賞主題歌賞を受賞した名コンビ、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールがオリジナルの楽曲で、ショーの世界へといざなう。

 バーナムに関わる人々のエピソードが物語を彩る。夢想家の夫に尽くす妻チャリティの揺るぎない愛。バーナムのビジネススタイルに魅了され、上流階級の生活を捨ててパートナーとなるフィリップ(ザック・エフロン)と空中ブランコのスター、アン(ゼンデイヤ)との恋はロマンチックで、2人が空中で心を通わせるシーンは夢の世界に羽ばたくようだ。

 ゴールデン・グローブ賞で主題歌賞を受賞した「ディス・イズ・ミー」は、外見や身分の違いではなく、ありのままで自分らしく生きていく心の叫びを歌い上げる。
    =1時間45分
(2018年2月17日掲載)
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(C)2017 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved. 

 文化大革命後、開放政策の一環として中国で初めて公開された外国映画が、高倉健主演の「君よ憤怒の河を渉れ」(1976年)。観客動員数が8億人に及ぶ社会現象を巻き起こしたという。高倉健の熱烈なファンだったジョン・ウー監督が、オマージュをささげてリメークしたのがサスペンス・アクション「マンハント」だ。

 大手企業の顧問弁護士ドゥ・チウ(チャン・ハンユー)が自宅のベッドで目覚めると、隣に女性秘書の死体が横たわっていた。容疑者として警察に追われるドゥ・チウを、さらに女殺し屋たちが襲いかかる。大阪府警の敏腕刑事・矢村(福山雅治)は、追跡するうちに違和感を覚え、事件の裏に仕組まれた陰謀に、ドゥ・チウとともに立ち向かっていく。

 子どもの頃から日本映画が好きで影響を受けたというジョン・ウー監督。長年の夢だった日本での全編ロケを行った。役者も中国、日本、韓国からキャスティングされ、せりふは英語、日本語、中国語が飛び交う。日本を舞台にしているだけになじんだ映像なのだが、どこか異国のように、スタイリッシュで不思議な感覚に包まれる。

 ハリウッドでも「フェイス/オフ」(1997年)「M:I2」(2000年)などヒットを飛ばし、独特のアクションスタイルで魅了してきた監督は、本作でも水上バイクでの追跡シーンをはじめ二丁拳銃での銃撃戦など、激しくスケールの大きなアクションが見どころだ。そして、監督のシンボルである白い鳩が華麗に舞う。

 ハードなアクションに挑戦している福山雅治の起用を、「以前から注目していたアーティストの一人。人情と正義感に満ちていて矢村像にぴったりだと思った」と語る。容疑者と刑事という対立の立場から、言葉の壁を越えて、友情と絆が生まれていくこともテーマの一つだ。女殺し屋の一人に監督の娘アンジェルス・ウーがふんしているのも驚きだ。
=1時間50分
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(C)2017 SHEPARD DOG, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. 

 イラク戦争の米軍爆発物処理班の極限心理を描いた「ハート・ロッカー」(2008年)で、女性として史上初のアカデミー賞監督賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督。ウサマ・ビンラディン容疑者捜索に迫る「ゼロ・ダーク・サーティ」(2012年)など、常に骨太な問題作を手掛けるビグロー監督の最新作が、約40人が死亡し、1000人以上の負傷者を出した米史上最大の暴動を追及した「デトロイト」だ。

 1967年7月深夜、デトロイト市警が行った酒場への強引な手入れをきっかけに、不満を抱える黒人たちの暴動が勃発。非常事態が宣言され、軍隊が介入し、戦場のような混乱に向かっていく。

 発生から3日目、モーテルに宿泊中の黒人客が悪ふざけでおもちゃの銃を発砲。狙撃事件と誤認して乗り込んだ白人警官の人種差別による虐待が、惨劇を引き起こす。

 後に裁判となったモーテル事件が物語の核となり、息もできないほどの緊迫した場面が展開。黒人の若者たちと一緒に白人女性2人がいたことが、さらに警官たちの憎悪を駆り立て、容赦ない尋問が暴力とともに行われた。

 運悪くそこに居合わせたのは、地元出身の黒人ボーカルグループのメンバーや、食料品店の警備を担当していた民間警備員。彼らは口を閉ざすことを強いられ、解放された。ビグロー監督は事件の被害者となった3人の証人を見つけ出し、それぞれの視点から事件の全貌と真相を描きだした。

 ドキュメント映像を交えて再現した暴動のシーンは生々しい。まるで昔の西部劇の保安官気取りで、「俺の街」と支配者のように振る舞う白人警官たち。彼らの強引なでっち上げと理不尽な言動は、恐ろしいほどに悪意に満ちている。

 1960年代の人種問題の緊張が、今なお途切れていないことに気づかされる。近年、無抵抗の黒人をいきなり射殺する白人警官の動画が何件も公開され、反発した人々の激しい怒りを呼んでいる。アメリカに根深く巣くう白人至上主義を見事に暴いた衝撃作だ。
    =2時間22分
(2018年1月27日掲載)
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 ペットフード協会の2017年全国犬猫飼育実態調査で、猫の推定飼育数が952万匹余に達し、犬を逆転した。そんな猫の魅力が満載の作品が「猫が教えてくれたこと」である。アメリカで昨年、たった1館でスタートし、瞬く間に130館で拡大公開されるほどのヒットになった。

 「猫の街」として知られるトルコ・イスタンブールに暮らす猫と人間模様を描いたドキュメンタリーだ。生まれも育ちも違う個性あふれる7匹の猫が登場する。地元で調査をしてストーリーを集め、35匹の候補から7匹に絞り込んだという。

 観光名所のガラタ塔を根城にする黄色い虎猫の「サリ」は、生まれたばかりの子猫たちのために、泥棒をしながら餌を調達するたくましい母猫だ。

 「アスラン」はシーフードレストランの近くにすみ、ネズミ退治が得意。「デニス」は市場を訪れる人たちにマスコットのようにかわいがられる社交家。高級レストランから食事を用意してもらえるほどジェントルマンな「デュマン」は、窓をたたく愛らしいしぐさで、客の間でも人気者だ。

 オスマン帝国の時代、貨物船に乗って世界中からイスタンブールにやってきたという猫たちはどことなくエキゾチックだ。イスラム教の人々からは神聖な生き物として考えられているだけに、野良猫だからと追い払うのではなく、隣人のように存在を認められ、街に溶け込んでいる。

 通り道に設置したカメラは、自由気ままに街を歩く彼らの日常と自然な表情を捉える。地上10センチの高さから猫目線で撮影した映像は、まるで自分が猫になって街を歩く気分だ。

 「猫はイスタンブールの魂」と語るジェイダ・トルン監督は、イスタンブール生まれ。11歳でトルコを離れるまで、苦難の多い子ども時代を野良猫と共に過ごしたという思い出が作品の原動力だ。

 かわいらしいだけでなく、人間に寄り添い、時にはしたたかな猫たち。伸び伸びと生きる猫たちの姿は、見る者をほっこりと幸せにしてくれるから不思議だ。
    =1時間19分
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(C) 2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR - WILD BUNCH - ORANGE STUDIO - LES FILMS DU FLEUVE - SIRENA FILM

 芸術の都パリが「ベル・エポック」(良き時代)と呼ばれた華やかな時代。ロートレックやロダンに女神として愛された天才ダンサーがいた。「ザ・ダンサー」はモダンダンスの祖といわれる伝説のダンサー、ロイ・フラーの波乱の半生を描いた実話の映画化だ。

 アメリカ西部の田舎町で育ったマリー・ルイズ・フラー(ソーコ)は、女優になる夢を抱いてニューヨークに移り住む。女優としては芽が出ないものの、踊りで拍手をもらったことをきっかけに、大きな布をまとい、鳥が羽ばたくようなダンスで、観客の心をつかむようになった。

 ダンサー名をロイ・フラーと変え、単身パリへ渡ったロイは、シルクと光の幻想的な踊りで一夜にしてスターに。それは新たな運命と試練の始まりだった。

 ロイの才能を見抜き、恋とも友情ともつかない不思議な絆を結ぶドルセー伯爵役のギャスパー・ウリエルは、繊細で妖しい魅力を放つ。肉体や容貌に自信がなかったロイが嫉妬と羨望を抱く相手、若き日のイサドラ・ダンカンを演じたリリー・ローズ・デップのダンスはしなやかで美しい。

 そして、ダンスを芸術へと究めていくストイックなダンサーになりきったソーコ。エネルギッシュなパフォーマンスに圧倒される。

 暗闇に浮かび上がりチョウのように舞う。はた目には優雅に見えるが、実際は恐るべき過酷な踊りで、一度舞台に立つと2日は踊れないほど、体力も気力も使い果たしたという。

 高く評価されているロイの才能の一つが、照明や色彩を駆使した舞台演出だが、きつい照明が失明の危機を招く。目にダメージを受けながらも挑戦し続け、情熱の炎を身にまとうかのような幻想的なダンスに酔いしれる。ロイの憧れだったバレエの殿堂「パリ・オペラ座」で実際に撮影されたシーンも見どころだ。

 これまであまり知られていないフラーの人生を、3年かけてよみがえらせた脚本と監督を手掛けたステファニー・ディ・ジュースト監督は、本作でセザール賞の監督賞にノミネートされている。

=1時間48分
シネマポイント((電)235・3683)で公開中
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(C) 2016 TWO STRINGS, LLC. All Rights Reserved.

 少年が三味線をかき鳴らすと、命を与えられた折り紙たちが生き生きと動き出す「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」。この日本的な題材の物語がアメリカ生まれであることに、まず驚かされる。

 片目の少年クボは闇の魔力に父親を殺され、追っ手から逃れてきた母親との2人暮らし。村の広場で折り紙の大道芸を披露しながら生計を立てている。

 灯籠流しの日、残りの目を奪おうとする闇の姉妹に見つかり、母親まで殺されてしまう。遺言の「3つの武具」を探す旅に出たクボは、お供に加わったサルとクワガタのハンゾウと、(執)(しつ)(拗)(よう)な追っ手と闘いながら危険な旅を続けるのだった。

 「コララインとボタンの魔女」で知られるスタジオライカが、日本の昔話の世界をストップモーションで描く。本物のパペットやセットを使って、豊かな表情と繊細な動きで、まるで絵巻物のように物語が繰り広げられていく。

 クボの表情は4800万通りに及ぶ。1秒間の映像のために動かすのは24コマ。わずか3秒の撮影に1週間という気の遠くなるような作業は、まさに職人魂だ。少年クボが亡き父親への思いを込めた、灯籠流しの幻想的なシーンでは、一つ一つLEDをともしたという。

 浮世絵を再現したかのような世界。鮮やかな色彩でありながら、日本の「わびさび」の美意識へのこだわり。小布施に深い縁がある北斎の作品が起用されているのも、さすが世界の北斎と鼻が高くなる。特に、三味線の音色で変幻自在に姿を変える折り紙の見事さに、目を奪われる。

 アイデアとクオリティーの高さで、89回アカデミー賞の長編アニメーション賞や視覚効果賞にノミネートされたのをはじめ、ゴールデン・グローブ賞、アニー賞などで27部門受賞という高い評価を受けている。

 黒沢明監督や宮崎駿監督に大きな影響を受けたというトラヴィス・ナイト監督は、8歳の時を皮切りに何度も訪日を重ね、日本の伝統文化や芸術を愛してきたという。日本への限りないリスペクトと愛に満ちたファンタジーだ。
=1時間43分
(2017年12月23日掲載)

長野千石劇場((電)226・7665)で1月6日(土)から公開
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(C) DENIAL FILM, LLC AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2016
 トランプ米大統領が都合の悪いニュースを「フェイクニュースだ」と主張し、アメリカのメディアを非難する言動を度々目にするようになった。それと同じようなことが、およそ20年前、第2次大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺「ホロコースト」を巡っても起きていた。

 「否定と肯定」は「ユダヤ人の大量虐殺は無かった」と主張する歴史家が実際に起こした裁判の行方を描いた法廷ドラマだ。

 アメリカの大学で教えるユダヤ人の歴史学者デボラ・E・リプシュタット(レイチェル・ワイズ)は、ホロコースト否定論者であるイギリスの歴史家デビッド・アービング(ティモシー・スポール)を見過ごすことができず、著書で非難していた。

 アービングがリプシュタットと出版社を名誉(毀)(き)(損)(そん)で提訴したことから、2人の論争はイギリスの法廷に持ち込まれることになった。

 「ヒトラーがユダヤ人の殺害を命じた証拠はあるのか」とうそぶくアービングにあ然とする。訴えられた側に立証責任があるというイギリスの司法制度にも驚かされる。世界が注目した裁判は2000年1月に始まり、4月に判決が下った。裁判に勝つため、弁護団のチームは驚くべき戦術を取る。その緊迫した法廷シーンも見どころだ。

 「穴がなければ、ホロコーストがあったことを証明できない」。ガス室の存在さえも否定するアービングの主張を崩すため、現地調査が行われる。そのシーンは、実際にポーランドのアウシュビッツ強制収容所で撮影された。カメラに映し出される惨劇の傷跡に胸が痛む。

 原作は裁判の記録を描いた「否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる戦い」。自身もユダヤ人をルーツに持つ女優のレイチェル・ワイズは、作者のリプシュタット本人に何度も会い、役作りに打ち込んだという。

 自分の利益のために、歴史の真実をねじ曲げようとすることへの怒り。声高に主張する者に耳を傾ける現代の風潮にも警鐘を鳴らす実話の映画化だ。
2017年12月2日掲載)
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(c) Incarcerated Industries Inc. All Rights Reserved.
 犯罪のスペシャリストがチームを組んで華麗に強奪する「オーシャンズ11」(2001年)シリーズ3部作がヒットしたスティーブン・ソダーバーグ監督。4年前に映画界から引退宣言をしたソダーバーグ監督が脚本の面白さにひかれて、監督復帰作に選んだのが、「ローガン・ラッキー」だ。

 炭鉱作業員のジミー・ローガン(チャイニング・テイタム)は妻に愛想をつかされて家庭は崩壊し、足が不自由なことで職場を首になるという不運続き。弟のクライドもイラク戦争で片手を失い、兄弟そろっての運の悪さに「ローガンののろい」とやゆされる。

 ジンクスをはね返すために思いついたのが、全米最大のカーレース中にばく大な売上金を盗み出す強盗だった。

 金庫の爆破役に天才的な爆弾技術を持つジョー(ダニエル・クレイグ)を刑務所から脱獄させ、鮮やかに強奪を決めるはずが、素人の寄せ集めだけに、アクシデントが続発。果たして人生の一発逆転を狙った作戦は成功するのか。

 銃撃や殺りくシーンを入れない監督のこだわりは健在。舞台となるサーキットで疾走する車のスピード感さながらに、ストーリー展開のテンポの良さに、ソダーバーグ監督らしい演出が光る。

 「マジックマイク」(12年)で監督とコンビを組んだチャイニング・テイタムをはじめ、007役で知られるダニエル・クレイグは金髪に入れ墨の爆弾犯というワイルドな悪役に変身。さらに、女優陣は、兄弟の妹メリー役にエルビス・プレスリーの孫娘ライリー・キーオ、ジミーの元妻にふんするのはケィティ・ホームズ、兄弟に疑惑の目を向ける有能なFBI捜査官に2度のオスカーに輝く演技派ヒラリー・スワンクと、はらはらさせる役どころで登場する。これまでとひと味違う役者たちの演技も見どころだ。

 強盗は悪いことだが、どこか憎めない犯人たちを応援したくなるのが不思議だ。悪いやつらの鼻をあかしたオーシャンとは違い、兄弟が闘うのは自分たちの人生。家族の絆の強さにもほろっとさせられる痛快クライム・エンターテインメントだ。
   =1時間59分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
 「炎上とは、インターネット
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上に非難や中傷が集中すること」。10年ぶりに改訂される広辞苑に、IT関連の用語がいくつも採用されたり、炎上のように新しい意味が付記されたりする。今や誰もが手軽にラインでつながるネット社会。「ザ・サークル」はネット社会の脅威をあぶりだす問題作だ。

 地元の田舎町で派遣社員として働くメイ(エマ・ワトソン)は、大学時代の親友の紹介で世界最大のSNS企業〈サークル〉に採用された。一流企業で福祉も完璧。社員たちも有能で、刺激的な職場に圧倒されながら、仕事に奮闘し、次第に頭角を現す。だが、炎上を体験したことで、プライバシーがなくなっていくことに違和感をぬぐえない。

 ある事件をきっかけに経営者ベイリー(トム・ハンクス)の目に留まったメイは、新たに開発された超小型カメラによるサービス「シー・チェンジ」のモデルケースに抜てきされる。生活の全てをカメラの前にさらけだしたメイは、1千万人を超すフォロワーを獲得し、人気者になるが、思いがけない事件に巻き込まれていく。

 スクリーン全体が、まるでSNSの画面のように映し出される。フォロワーからツィートが書き込まれ、「いいね」と賛同される心地よさ。だが、ひとたび批判が拡散すると、残酷なまでに悪意をまき散らすネットの怖さを見事に伝えるシーンだ。

 名優トム・ハンクスがふんするのは、スティーブ・ジョブズばりのカリスマCEO。野望を隠しながら、巧みな弁舌で人々を魅了し、洗脳していく。

 原作はピュリツァー賞にもノミネートされた作家ディブ・エガーズのベストセラー小説「ザ・サークル」。人々を結びつけるシェアが、ひとたび監視という言葉に置き換わった時に起きる閉塞感。すぐ先に待ち受けている未来に、どう向き合えばいいのか。巨大な監視システムに匹敵するネット社会がもたらす脅威に警鐘を鳴らす社会派エンターテインメントだ。

 メイの父親役を演じたビル・パクストンは今年2月に急逝し、この作品が遺作となった。
    =1時間50分
(2017年11月11日掲載)
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 SF映画の金字塔として高い支持を得たリドリー・スコット監督の「ブレードランナー」(1982年)。人口過密と酸性雨で荒廃した2019年の地球を舞台に、人造人間レプリカントを追跡する捜査官ブレードランナーの物語は、後の作品にも大きな影響を与えた。「ブレードランナー2049」は、その30年後の未来を描いた続編だ。

 地球規模の飢餓を救った企業家ウォレスは、人造人間を開発したタイレル社の資産を買い取り、従順な新型レプリカントの製造を開始していた。

 ブレードランナーのK(ライアン・ゴズリング)は、自身も同じレプリカントでありながら、寿命制限のない旧型を追跡して処分する任務を、粛々とこなす孤独な男。埋葬された骨の発見から陰謀に巻き込まれたKは、30年前にこつぜんと姿を消したブレードランナー、デッカード(ハリソン・フォード)の存在にたどり着く。

 人間に代わる使い捨ての労働力として開発されたレプリカントを「匹」と数え、「もどき」という侮辱の言葉を投げつける人間たち。前作では4年限定の寿命に疑問を持ち、植民地の惑星から地球へ逃亡したレプリカントとブレードランナーとの戦いが描かれた。

 SFアクションでありながら、生命とは何か、人間性とは何かを問い掛ける(深)(しん)(淵)(えん)なテーマは、ほかの作品とは一線を画すエモーショナルなストーリーだった。

 自分の記憶は本物か、それとも植え付けられたものなのか。捜査上でKが抱く謎に隠された真実。人生とは記憶の積み重ねなのだと改めて気付かせてくれる。

 地球環境が崩壊しソーラーパネルで埋め尽くされた大地、空間を利用した広告など、未来を予見した斬新な映像は現実のものに近づいている。日本語の看板や会話など東洋的なビジュアルも健在で、ファンにはうれしい。

 今回は製作に回ったリドリー・スコット監督の跡を継いで、作品の壮大な世界観をあますことなく映像化したのは、「メッセージ」でアカデミー賞監督賞にノミネートされたドゥニ・ビルヌーブ監督。前作のラストから納得の見事な続編となった。
    =2時間43分