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(C) ORIGAMI FILMS / BEE FILMS / DAVIS FILMS / SCOPE PICTURES / FRANCE 2 CINEMA / CINEMA RHONE-ALPES / CE QUI ME MEUT - 2015

 1943年、ナチスドイツの支配下にあったフランスからスイスへ逃れ、生き延びたユダヤ人の子どもたちがいた。「少女ファニーと運命の旅」は、現在、イスラエルに住むファニー・ベン=アミが体験をつづった自伝の映画化だ。

 13歳の少女ファニー(レオニー・スーショー)は両親と別れ、幼い2人の妹と共に、支援組織が運営するフランスの片田舎の児童施設でひそかに暮らしていた。心ない密告で危険が迫り、責任者のマダム・フォーマン(セシル・ドゥ・フランス)は、子どもたちをスイスへ逃がそうと決意する。

 だが、ドイツ軍の厳しい取り締まりでマダムとはぐれ、9人の子どもたちだけでスイスの国境を目指す過酷な旅が始まった。
 勇気ある逃亡劇を再現するのは、千人近くの子どもたちから選ばれた9人の少年少女。死の恐怖と空腹を乗り越え、助け合いながら絆を深めていく。幾度も起きるピンチのなかでも、子どもらしい無邪気な瞬間をとらえた映像が心に残る。

 4歳の少女が母親の死に向き合う姿を描いた感動作「ポネット」(1996年)の名匠ジャック・ドワイヨン監督の娘、ローラ・ドワイヨンが、父親譲りの見事な視点で監督を務めている。

 「ドイツ人には絶対捕まらない―という固い決意があればこそ、実現できた」「今また、あの時代と似た危険を感じるから映画化を許可した」とファニー・ベン=アミは語る。

 実際には17人もの子どもたちを率いていたというから驚きだ。仲間が病気になり死に直面した時に、気持ちが折れそうになったそうだが、13歳の少女が背負うには、その荷はあまりにも重すぎる。

 「ユダヤ人をやめれば」という幼い妹の無邪気な問い掛けに、言葉を失う。大人だけでなく子どもたちにも、この悲惨な歴史があったことを知ってほしいと思う。

 今も世界のどこかで起きている紛争で命を脅かされている子どもたちがいる。大人たちが起こした戦争の犠牲になるのは罪のない子どもたち。二度と笑顔を奪ってはならないとしみじみ思う。
    =1時間36分
(10月14日掲載)
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(C)2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会
 「幼な子われらに生まれ」は、直木賞作家重松清が21年前に書いた小説が原作である。荒井晴彦の脚本、三島有紀子監督によって家族の物語として映画化された。

 商社マンの田中信(浅野忠信)とバツイチ2人の子持ちの奈苗(田中麗奈)は再婚同士。キャリア志向の信の前妻、友佳(寺島しのぶ)との間に生まれた小学6年の娘と定期的に会う時間を大切にしている。

 仕事よりも家庭を優先する信は出向を命じられ、エリートサラリーマンから一転、子会社の倉庫係に左遷され、
プライドを傷つけられながら日々働く毎日だ。

 しかも、奈苗の妊娠が発覚し、多感な年頃になった妻の連れ子から「本当の父親に会いたい」と責められる。仕方なく父親の沢田(宮藤官九郎)に会いにいくが、DVで家族を捨てた沢田は、くずのような男だ。

 妻の妊娠で異母きょうだいが生まれることへの戸惑いと、徐々に重荷が増える生活に息苦しさを覚える信。平穏な暮らしに見えながら、新たな家族が生まれることで、つぎはぎだらけの家族の間にさざ波が立ち始める。

 信が出会うのは元妻の夫と、今の妻の元夫。別れても慕ってくれる実の娘と、血のつながらない懐かない娘の対極的な反応に迷いながらも、良き父親であろうとする浅野忠信の繊細な演技が印象的だ。家庭的だが、男に依存するタイプの妻を演じた田中麗奈のべったり感は、女性から見ても身につまされる。

 頭で分かっていても、感情がぶつかりあい傷つけあってしまう、人間という存在。そんな不器用な大人たちの姿に魅力を感じたという三島監督は、脚本に書かれたせりふだけでなく、役者たちのエチュード、即興の演技から感情をくみ取り、多くのシーンが生まれたと語る。そんな役者たちの演技も見どころだ。

 父性とは、母性とは何なのか。血はつながっていなくても親子になれるのか。多様化する現代の家族の絆のあり方をリアルに描いた物語は、モントリオール世界映画祭コンペティション部門で審査員特別グランプリを受賞した。
(C)2016 STX Financing, LLC.All Rights Reserved.

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 トランプ米大統領が不法移民阻止対策として、メキシコとの「国境の壁」建設を主張し続けている。今、国境地帯では何が起こっているのか。「ノー・エスケープ 自由への国境」は、より良い人生を求めて自由の国アメリカを目指す移民たちの姿を、メキシコ側から描いたサバイバル映画だ。

 モイセス(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、アメリカにいる妻と息子に会うため、不法越境をしようとしていた。しかし、エンジントラブルで車を降ろされ、ほかのメキシコ人たちと徒歩で砂漠を越えることになってしまう。

 摂氏50度の砂漠に照りつける太陽、そして突然の銃弾が彼らに襲いかかる。不法に入国してくる人たちを待ち受け、排除しようとする白人サム(ジェフリー・ディーン・モーガン)が放つ銃弾に次々と倒れる移民たち。過酷な逃走が始まった。

 ラストまで容赦ない追跡劇は、呼吸困難になりそうなほど、緊迫感に満ちている。サムの相棒として移民たちを追跡するのは猟犬のトラッカー。主人には従順だが、移民には牙をむく恐ろしい存在だ。実際に警備の訓練を受けた犬を起用したというのだから、人間を駆り立て追い詰める迫力は半端でない。

 宇宙に一人取り残された女性飛行士のサバイバルを描き、アカデミー賞7部門を受賞した「ゼロ・グラビティ」(2013年)で、父親のアルフォンソ・キュアロン監督とともに脚本を手掛けたホナス・キュアロンが監督、脚本、編集、製作を務めている。

 ホナス・キュアロン監督は移民たちの過酷な体験談を聞き、8年の構想を経て撮影に臨んだという。舞台となる砂漠は、物語の真実を語る重要な要素だけに、世界中のあらゆる砂漠を旅した中からロケ地を選んだという。

 まるで狩りを楽しむかのように平然と命を奪う自警団が、実際にも存在することの衝撃。不法入国者を殺すことは当然の権利なのか。私たちが知るべき現実を描いたタイムリーな作品は、今年のアカデミー賞外国語映画賞のメキシコ代表作品に選ばれている。

=1時間28分
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 海抜3千メートルを超えるチベット高原で、半農半牧を営む一家の物語「草原の河」。チベット人の監督ソンタルジャとキャストによる作品だ。

 6歳の少女ヤンチェン・ラモは父親のグル、母親のルクドルとの3人暮らし。村から離れた洞窟で修行中の祖父は「行者さま」と呼ばれ、尊敬されている。

 祖父の具合が悪いと聞き、グルは娘を連れて見舞いに行くが、家族を捨てて僧籍に戻った父親を許せないグルは、そばまで行きながら、ヤンチェン・ラモだけに行かせて、自分は会わないまま帰ってしまう。

 夏の放牧地に移動した一家のヒツジたちがオオカミに襲われ、母ヒツジを殺された子ヒツジの世話をヤンチェン・ラモがすることになった。自身もまだ母親のおっぱいをねだる甘えん坊のヤンチェン・ラモに大問題が発生。ルクドルに赤ちゃんができたのだ。母親の愛情を取られてしまうと、ヤンチェン・ラモの心に不安が広がる。

 原題は「リバー」(河)。広大な大地を流れる雪解け水が人間の行く手を阻む。天高く舞う鳥、刻々と変わる光、鳴る風の音。チベットの自然の何と厳しく、雄大なことか。ロケはソンタルジャ監督の故郷である青海省海南チベット族自治州で行われた。
実は、ヤンチェン・ラモありきで映画がスタートしたそうだ。彼女の天賦の才に驚いた監督が、子どもの目線でみた家族の物語を思い付いたという。

 彼女と父親役のグルは、2人ともソンタルジャ監督の遠い親戚で、演技指導はせず、普段の生活の中で捉えたという表情は、とても豊かで素朴だ。幼い表情の愛くるしさ。赤い着物にイヤリングやネックレスという民族衣装もかわいい。魅力あふれる少女に会いたくなる。撮影時はまだ6歳だったヤンチェン・ラモは、上海国際映画祭で、史上最年少で最優秀女優賞を受賞した。

 物質文明と離れた質素で大地に根付いたテント暮らしに、物にあふれた私たちの生活が重く感じてしまう。文化大革命が大きな傷を残したチベット。改革開放後の変化と、家族3代の世代間ギャップと絆を見つめた物語だ。
=1時間38分
(日本映画ペンクラブ会員、ライター)
 長野ロキシー((電)232・3016)で公開中
(2017年7月8日掲載)

(C)GARUDA FILM
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 円卓の騎士、キャメロット城など、さまざまな伝説で知られるイギリスの英雄アーサー王。中でも有名なのは、王の証しである聖剣エクスカリバーを、岩から引き抜く場面だろうか。「キング・アーサー」は路地裏で育った貧しい青年アーサーが、運命に導かれて偉大な存在へ歩み出す物語だ。

 イングランド王ユーサー(エリック・バナ)は、王の座を狙った弟のヴォーティガン(ジュード・ロウ)の謀反により殺害されてしまう。

 辛うじて逃れた息子のアーサーは記憶を失ったまま、スラムでたくましく成長する。ユーサーの死とともに行方不明になっていた聖剣が地上に現れ、アーサー(チャーリー・ハナム)が引き抜いたことで、暴君として君臨するヴォーティガンとの戦いが始まった。

 ガイ・リッチー監督は名探偵シャーロック・ホームズをシリーズで映画化。頭脳明晰(めいせき)という印象から一転、エキセントリックな面を併せ持つこれまでにない不思議な魅力のホームズを生み出した。アーサーも、売春宿育ちで強靭(きょうじん)な肉体と、生き抜く知恵を身に付けたチョイ悪なタフガイとして登場させているのが面白い。

 「シャーロック・ホームズ」でワトソン役のジュード・ロウは、本作では権力と闇の魔術に魅入られていく残忍な男を演じているが、演技力はさすが。極悪非道な悪役ぶりは、バトルだけでない深みを作品に与えている。

 リッチー監督ならではのスタイリッシュな映像は健在。三百六十度のハイスピードカメラとスローモーションを組み合わせた、斬新な映像スタイルとテンポの良さで、物語にぐいぐいと引き込む。操る者が全てを制するエクスカリバーの威力のすごさは、全てが止まったかのような瞬間の中で素早く動く。まさに体感型の映像だ。

 キャメロット城を攻撃する妖術使いとの戦いは巨大な怪獣が暴れまくり、エキサイティングなシーンの連続にオープニングから度肝を抜かれる。そんなCG映像に負けないのが、ロケ地のウェールズの大自然の粗削りな美しさ。イギリスのファンタジーを堪能できるアクションエンターテインメントだ。
=126分
(2017年6月24日号掲載)

=写真=(C)2017 WARNER BROS. ENT. INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED AND RATPAC-DUNE ENT. LLCPhoto: Daniel Smith
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 第2次世界大戦で米軍を苦戦させた難攻不落の要塞(ようさい)「ハクソー・リッジ」。米軍が、のこぎり(ハクソー)の歯のような崖(リッジ)と呼んだ沖縄の激戦地、前田高地で起きた実話の映画化だ。

 戦争が激化し多くの若者が出征していった。「汝(なんじ)、殺すことなかれ」という神との誓いを立てたデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は、衛生兵として志願する。

 だが、良心的兵役拒否者として銃を持てないドスは、狙撃訓練を拒否したことで、上官からも仲間からも冷たく扱われ、軍法会議にまでかけられてしまう。「戦争は人を殺すこと」と命令する軍に、断固として「人を殺せない」という信念を貫こうとするドス。彼の命と向き合う姿は、次第に周りの人々を変えていく。

 「アメイジング・スパイダーマン」(2012年)「沈黙・サイレンス」(16年)と、ジャンルの違う作品で役者として力量を見せつけるガーフィールドは、穏やかなほほ笑みで、真のヒーローを演じ切った。

 俳優でもある監督のメル・ギブソンはオスカー受賞作「ブレイブハート」(1995年)で見せた迫力満点の闘いを、見事に再現。やむことのない砲撃に肉体は砕け、血が飛び散る。残酷なほど壮絶なシーンは、戦争の現実を容赦なく突き付ける。

 死を名誉と教え込まれた日本軍兵士が、命令でいとも簡単に命を捨てていく姿は、同じ日本人として目を背けたくなるほどつらく、胸が苦しくなる。

 そんな中でたった一人、命を救う戦いに挑んだドスは、良心的兵役拒否者としてアメリカ史上初めて名誉勲章を授与された。エンドロールで救われた人々の声で真実が語られる。

 ドスのような人物がいた驚き。メル・ギブソン監督は鼓舞するのではなく、冷静な視点でこれまで描かれることのなかった戦争を見つめる。凄惨(せいさん)であればあるほど、反戦への思いを強くさせる。

 日本人が知るべき衝撃の物語は、アカデミー賞で作品賞、主演男優賞など6部門ノミネート、編集・録音の2部門で受賞した。
=2時間19分
(2017年6月17日号掲載)

=写真=(C) Cosmos Filmed Entertainment Pty Ltd 2016
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 その土地だからこそ生まれる物語がある。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」は米マ

サチューセッツ州にある海辺の小さな町。そこで生まれ育った主人公の心象風景として登

場するヒューマンドラマだ。

 ボストン郊外でアパートの便利屋として生計を立てるリー(ケイシー・アフレック)は

、兄のジョーが倒れたという知らせに、久しぶりに故郷の町に戻ってきた。兄が遺言で16

歳の息子パトリックの後見人にリーを指名していたことに困惑するが、幼い頃からパトリ

ックの成長する姿を見てきたリーは、おいの面倒を見ながら、いつしか目を背けていた自

分の過去と向き合っていく。

 リーがなぜ故郷を去ったのか、なぜかたくななまでに心を閉ざすのか、

 物語は過去と現在を行き来しながら、リーを襲った悲劇を映し出す。故郷での日々や思

い出が幸せであればあるほど、リーの苦しみは際立つ。ホッケーやバンド活動、ガールフ

レンドと青春を謳歌(おうか)するパトリックも、やんちゃぶりの陰に悲しみを隠している


 冬から春へと変わりゆく景色の中を、肩を並べて歩くリーとパトリック。大切な存在を

失った2人の心の変化を、カメラは淡々と追う。

 2人が苦しみからどう立ち上がるのか。誰もがどこかで同じ立場になるかもしれない人生

の厳しい現実。互いに手を差し伸べ、支え合う姿にいつしか癒やされ、静かな余韻に包ま

れる。優しさに満ちた幾つものエピソードは、深い共感を呼ぶ。

 初めは主演を務める予定だったマット・デイモンと共同で制作し、オリジナルストーリ

ーを2年かけて書き上げたケネス・ロナーガン監督は、今年のアカデミー賞で脚本賞を受賞

。「観客に実際に体験した気持ちになってほしい。役者たちの視点で映画を見てほしい」

と語る。

 監督の思いを体現したケイシー・アフレックの繊細な演技は、アカデミー賞とゴールデ

ン・グローブ賞で主演男優賞を受賞したのをはじめ、数々の映画賞で高い評価を得ている

=2時間17分
(2017年6月10日号掲載)

=写真=(C)2016 K Films Manchester LLC.All Rights Reserved.
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 妻がねだった誕生日プレゼントは離婚届だった―。熟年離婚が巻き起こす一家のてんやわんやを描いた「家族はつらいよ」(2016年)。山田洋次監督が愛する平田一家が再び帰ってきた。「家族はつらいよ2」は、高齢者ドライバーの免許返納問題から大騒動が始まる。

 平田周造(橋爪功)がささやかな楽しみにしているドライブに赤信号がともる。車に傷が目立ち始めたことで、事故を心配した子どもたちが周造を説得すべく、家族会議を招集した。

 心配をよそに、わがまま親父はひいきの小料理屋の女将(おかみ)かよ(風吹ジュン)とドライブに出掛けるが、その途中で音信不通だった同級生の丸田(小林稔侍)と40年ぶりに再会する。

 85歳になった山田監督にとって、85本目となる本作のテーマは「無縁社会」。日常生活から生まれるユーモアとペーソスを丁寧に描いてきた監督の目線から紡がれるエピソードの数々は、笑いながら身につまされることばかりだ。高齢者ドライバーによる事故や孤独死。最近の事件をさりげなく取り入れながらも、決してぶれないのは「家族の絆」の大切さだ。

 「東京家族」(2013年)「家族はつらいよ」に次いで3回目の家族を演じる役者たちは、それぞれの世代の感情を代弁する。妻役の吉行和子、同居する長男夫婦の西村雅彦と夏川結衣、長女夫婦の中嶋朋子と林家正蔵、次男夫婦の妻夫木聡と蒼井優。

 本物の家族のような存在感と、キャラクターになりきった自然な丁々発止の掛け合いの絶妙な面白さ。「子の心親知らず」「親心 子知らず」で、互いを思うあまりに、つい諍(いさか)いに発展するのは底に愛情があればこそだ。

 それ自体が物語の味わいを醸し出すタイトルデザインはイラストレーターの横尾忠則、音楽は久石譲というぜいたくな布陣は健在だ。

 おかしくて、悲しくて、つらくて、でもうれしくて、それが家族、それが人生。つましくてささやかな幸せに気付かせてくれる山田監督の温かい人情の世界がここにある。
=2時間16分
(2017年6月3日号掲載)

=写真=(C)「家族はつらいよ 2 」製作委員会
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 チームメンバー全員がお尋ね者。マーベル・コミックから生まれた異色のヒーローたちが、3年ぶりにスクリーンに帰ってきた。銀河を救うため、ノリで結成された落ちこぼれ軍団が大活躍する続編が「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」だ。

 幼い時に宇宙海賊に地球から拉致され、銀河で育ったトレジャー・ハンターのピーター(クリス・プラット)。彼と行動を共にするのは、セクシーでクールなすご腕の暗殺者ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)、メカの天才で凶暴な賞金稼ぎのアライグマ・ロケット、マッチョなドラックス、樹木型ヒューマノイド・グルートのユニークな5人組だ。

 小遣い稼ぎで雇い兵を引き受けた黄金の惑星ソブリンで盗みを働き、無敵艦隊から激しい攻撃を受ける。壊滅寸前の危機から救ったのは、ピーターの父親と名乗る謎の男エゴ(カート・ラッセル)だった。だが、父親との再会には、思わぬ真実と陰謀が隠されていた。

 1作目でおなじみとなったキャラクターたちのワルの能力に、それぞれのウイークポイントがエピソードとして描かれ、より魅力的な存在になった。

 ピーターの出生の秘密と亡き母への思慕。ガモーラの命を狙う妹ネビュラの姉妹の確執。ロケットの長年の相棒の忘れ形見、「ボクはグルート」(意味はみな違う)しかしゃべれない身長25センチのベビー・グルートのたまらない愛くるしさは親心を誘う。宇宙を舞台にしているが、物語の中心を流れる「家族の愛」と「仲間との強い絆」が深い共感を呼ぶ。

 コミックヒーロー物は苦手という人も、意外な切り口で感情移入できるのが音楽の存在だ。ピーターの母親が息子のために残した音楽テープは彼の大切な宝物。1970年代をはじめとしたレトロなヒットソングがストーリーを彩る。

 アクションもギャグも笑いもパワーアップ。おまけに泣けるシーンまで付いてきて、前作を超える面白さは半端ではない。エンドロールでは続編のシーンも公開されて、最後までたっぷり楽しませてくれる痛快SFアクションだ。
=2時間16分(日本映画ペンクラブ会員、ライター)

=写真=(C)Marvel Studios 2017
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 戦争で無人攻撃機・ドローンの実用化が進んでいるという。「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」は、現代の見えない戦争の正体に迫る軍事サスペンスだ。まさに、私たちが今知るべき現実を描いている。

 英国諜報(ちょうほう)機関のパウエル大佐(ヘレン・ミレン)は、英国籍でありながらイスラムテロ組織アルシャバブに属する重要指名手配犯の女を、何年にもわたって追跡していた。

 米軍の最新鋭ドローン偵察機を使った英米合同訓練の最中、ケニア・ナイロビの6千メートル上空を飛ぶ「アイ・イン・ザ・スカイ(天空の眼)」が、隠れ家にいる女とテロリストたちを発見する。市場に潜り込ませた現地工作員が隠れ家に飛ばした小さなドローンから送られてくる映像には、大規模な自爆テロを準備する姿が映されていた。 

 ロンドンの司令部で指揮を執るパウエル大佐は、被害を防ぐため、ピンポイント爆撃を即断する。だが、ミサイル攻撃の標的を定めた瞬間、市場にパン売りの少女の姿が映し出された。

 ターゲットを仕留めるために、罪のない少女を巻き添えにしていいのか―。攻撃許可を下す英国内閣会議室、米ホワイトハウスが、それぞれの思惑で協議する中、実際にドローンを飛ばす米空軍基地のドローン・パイロットチームは命令に困惑する。

 正義かモラルか。決定するのは「天空の眼」が映し出す戦場を、遠く離れた安全な会議室のモニターで見ている政治家や軍人たち。刻々とタイムリミットが迫り、登場人物が直面する葛藤(かっとう)に、一般市民を巻き込むテロの恐怖を知る観客も答えに迷う。観客に投げ掛けた問いこそが、監督のギャビン・フッドが望んだことだという。

 米トランプ政権がシリア空軍基地へミサイル攻撃を行い、世界は常に戦争の脅威にさらされていることを実感した。この作品に登場する最新兵器にも驚かされる。技術が発達したことで、人間の命が数字でしかない戦争の現実と危険性がひしひしと迫ってくる。 
=102分
(2017年5月13日号掲載)

=写真= eOne Films (EITS) Limited